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不健康な食事が原因で5人に1人が死亡

不健康な食事が原因で、世界で年間に1000万人以上が死亡しているという調査結果が、2018年11月に発表されました。

死亡した人の5人に1人で不健康な食事が原因になっており、その影響は高血圧や喫煙よりも深刻です。

食事改善で多くの命を救える

食事をどのように摂るかという問題は、2型糖尿病、心血管疾患などの慢性的な健康障害に直結しています。

食事を改善することで、5人に1人の死を防ぐことができます。

ワシントン大学の健康基準・評価研究所(IHME)のアシュカン アフシン博士は次のように述べています。

「不健康な食事はどんな人でも深刻な問題になりえます。

年齢や性別、地理的な影響、経済状態などに関わらず、早死の原因になるのです」

2017年に不健康な食事が、世界の1,090万の死亡の原因になっています。

これは成人の死亡の22%を占めることが明らかになりました。

病気や障害、早死により失われた年数を示す障害調整生存年(DALYs)は2億5,500万に達しました。

全DALYsの16%を占めます。

世界中の食事による健康への影響を研究

国際医学誌「ランセット(The Lancet)」に発表されたワシントン大学などによる研究は、これまでで最大規模のものです。

約40ヵ国の130人以上の研究者が参加して、1990年から2017年までの195カ国におけるデータを分析しました。

主要な死因と食事

解析した結果、主要な死因は

  1. 心血管疾患(CVD)
  2. がん
  3. 糖尿病

であることが明らかになりました。

食事は、

  • 心血管疾患による949万7,300人
  • がんによる91万3,100人
  • 糖尿病による33万8,700人
  • 腎臓病による13万6,600人

の死亡とそれぞれ関連していました。

これに対し、

  • 喫煙は800万人
  • 高血圧は1,040万人

の死亡と関連していました。

食事の影響は喫煙や高血圧よりも深刻であることが示されました。

もっとも影響がある食事の要因

研究では、食事でもっとも影響が強いのは、国によって異なりますが、3つの因子であることが示されました。

もっとも影響が強いのは、

  • 全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと
  • 塩分の摂取量が多いこと

で、死亡の50%とDALYsの66%に影響していました。

  • 赤身肉や加工肉の摂り過ぎ、砂糖入り飲料とトランス脂肪酸の摂り過ぎ

が続き、死亡の50%とDALYsの34%に影響していました。

死亡の主な食事の危険因子

  • 塩分の摂取が多い
  • 全粒穀物の摂取が少ない
  • フルーツの摂取が少ない
  • ナッツや種子の摂取が少ない
  • 野菜の摂取が少ない
  • オメガ-3脂肪酸の摂取が少ない

それぞれが全世界の死亡の2%以上を占めています。

国別の食事の要因

「塩分の大量摂取」が、日本、中国、タイでの死亡およびDALYsの主要な食事リスクです。

中国は、食事に関連した心血管疾患による死亡の割合と、癌による死亡の割合が最も高かったです。

日本では、食事に関連した心血管疾患による死亡の割合と、糖尿病による死亡の割合が最も低かったです。

「全粒穀物の摂取量が少ないこと」が、アメリカ、インド、ブラジル、パキスタン、ナイジェリア、ロシア、エジプト、ドイツ、イラン、トルコにおける死亡およびDALYsの主な食事リスク因子でした。

「果物の摂取量の少なさ」が、バングラデシュでは、死亡やDALYsに関連した主な食事のリスクです。

「ナッツや種子の摂取量が少なさ」が、メキシコでは、食事関連の死亡やDALYsが第1位でした。

メキシコは、食事に関連した2型糖尿病による死亡の割合が最も高かったです。

日本の食事

日本の主要な食事リスクは、塩分の大量摂取

2017年は、世界で人口の多い20国の中で、食事に関連するすべての死亡率で、日本が最も死亡率が低いです。

日本の食事に関連するすべての死亡率
人口10万人当たりの死亡数 97人 [95%UI 89 - 106]
DALYs(人口10万人当たり2300 [2099 - 2513] DALYs)

最も死亡率が高いのはエジプトで、比較するとエジプトは日本の5倍以上の死亡率です。

エジプトの食事に関連するすべての死亡率
人口10万人当たりの死亡数 552人 [95%UI 490-620]
DALYs(人口10万人当たり11837 [10525 - 13268] DALYs)

最適な食事の量

摂取を増やしたい食事

摂取量が少ない食事と理想の摂取量
摂取を増やす 1日あたりの最適摂取量
(最適範囲)
果物 250g
(200~300)
野菜 360g
(290~430)
豆類 60g
(50~70)
全粒穀物 125g
(100~150)
ナッツや種子 21g
(16~25)
牛乳 435g
(350~520)
食物繊維 24g
(19~28)
カルシウム 1.25g
(1.00~1.50)
魚介類
(オメガ3脂肪酸)
250mg
(200~300)
多価不飽和脂肪酸 総エネルギーの11%
(9~13)

摂取を減らしたい食事

摂取量が多い食事と理想の摂取量
摂取を減らす 1日あたりの最適摂取量
(最適範囲)
赤身肉 23g
(18~27)
加工肉 2g
(0~4)
糖甘味飲料 3g
(0~5)
トランス脂肪酸 総エネルギーの0.5%
(0.0~1.0)
塩分
(尿中ナトリウム)
3g
(1~5)

食事内容の定義

摂取を増やしたい食事内容の定義
食事内容の定義
摂取を
増やす
最適摂取量の定義
果物 生フルーツ、
冷凍フルーツ、
調理済みフルーツ、
缶詰フルーツ、
ドライフルーツ
除外(フルーツジュース、
塩漬け・漬物フルーツ)
野菜 生野菜、冷凍野菜、
調理済み野菜、
缶詰野菜、乾燥野菜
除外(塩漬け・漬け物の野菜、
野菜ジュース、
豆類、ナッツ、種子、
ポテトやコーンなどの
でんぷん質の野菜)
豆類 生豆、冷凍豆、
調理済み豆、缶詰豆、
乾燥豆
全粒穀物 朝食用シリアル、
パン、米、
パスタ、ビスケット、
マフィン、トルティーヤ、
パンケーキなどからの
全粒穀物(ふすま、胚芽、および胚乳)
ナッツや種子 ナッツ、種子食品
牛乳 無脂肪牛乳、低脂肪牛乳、
全脂肪牛乳を含む牛乳
除外(豆乳、他の植物由来成分)
食物繊維 果物、野菜、穀物、
豆類、ナッツを含む
すべての原料からの繊維
カルシウム 牛乳、ヨーグルト、チーズなど、
あらゆる摂取源からのカルシウム
魚介類
オメガ3脂肪酸
エイコサペンタエン酸(EPA)、
ドコサヘキサエン酸(DHA)
多価不飽和
脂肪酸
大豆油、トウモロコシ油、
ベニバナ油などの
液体植物油を主とする、
すべての原料からのオメガ6脂肪酸
摂取を減らしたい食事内容の定義
食事内容の定義
摂取を
減らす
最適摂取量の定義
赤身肉 牛肉、豚肉、
子羊肉、山羊
除外(鶏肉、魚、
卵、加工肉)
加工肉 燻製肉、乾燥肉、
塩漬け肉、
化学保存料の添加によって
保存された肉
糖甘味飲料 炭酸飲料、ソーダ、
エネルギー飲料、フルーツ飲料
除外(100%フルーツジュース、
野菜ジュース)
トランス脂肪酸 水素添加植物油、
反すう動物製品から摂取する
すべてのトランス脂肪酸
塩分 1日当たりgで測定した
24時間尿中ナトリウム

不健康な食事による心血管疾患で死亡

アフシン博士らの調査によると、米国では不健康な食事が原因で年間に40万人以上が心血管疾患で死亡しているといいます。

「野菜や果物、全粒穀物、ナッツ類などの健康的な食品を摂り、塩分やトランス脂肪酸の摂取を控えることで、米国だけで年間に数万人の命を救えます」
と、アフシン博士と述べています。

ワシントン大学の研究チームが、米国健康・栄養調査(NHANES)の1990~2012年のデータを解析し、食事が心血管疾患にどのように影響しているかを調べました。

結果、2015年に心血管疾患で死亡した男性22万2,100人と女性19万3,400人で、不健康な食事が要因になっていることが判明しました。

米国心臓学会(AHA)は食生活を改善し、

  • 野菜や果物
  • 精製されていない穀類、全粒粉
  • 低脂肪の牛乳や乳製品
  • 皮を取り除いた鶏肉
  • ナッツ類や大豆

といった食品を摂ることを推奨しています。

その一方で、

  • 飽和脂肪酸の多い赤身肉や加工肉

は減らすことを勧めています。

世界で食生活の改善を促す政策が必要

「世界では加工食品やジャンクフードなどの不健康な食品の流通が増えています。

健康的な食品を増やし、不健康な食品を減らすために、食事などの生活習慣の改善を促す政策が必要とされています」
と、アフシン博士は指摘していいます。

食事摂取基準を設けている国は多いが、乳製品、全粒粉、ナッツ類などの食品で、現実の摂取量とのギャップがみられるといいます。

研究者らは、食料の生産者と食品の製造業の間で、こうしたギャップが生じていると予測しています。

健康的な食品の摂取を増やすために、食料の生産、加工、包装、マーケティングなど、食料を供給するサイクルのさまざまな領域で調整する必要があります。

大豆食品や豆類などの植物性タンパク質の摂取量を増やすことは、心血管疾患の危険因子を減らすだけでなく、地球環境にも良い可能性があるという報告もあります。

「加工食品だけでなく生鮮食品においても、食品の輸出入量が世界的に増えています。

国を超えて、食事の改善が緊急に必要であることを啓発する必要があります」
と、アフシン博士は強調しています。

2章 食