長寿地域(ブルーゾーン)の長生きの処方箋
世界中の長寿地域を米国人研究者ダン・ベットナー(1960年生まれ)が2004年から専門家グループ(医者、人類学者、人口学者、栄養学者、疫学者たち)とチームを組み、調査をしました。
調査したブルーゾーン(長寿地域)
- サルデーニャ島(イタリア)
- 沖縄(日本)
- イカリア島(ギリシャ)
- ロマリンダ(米カリフォルニア州)
- ニコヤ半島(コスタリカ)
長寿の9つの要因
- 日常生活でよく体を動かしている、そしてそれが規則的なこと。
長寿地域に住む人々は、座る時間が多い生活様式とは無縁である。
- 生き甲斐があること。
毎朝起きるための目的があるということ。
- ストレスが少ない。
ストレスは老化とかかわるすべての病気と密接な関係にある。
ブルーゾーンでは、生活のリズムの中にストレスを減らすための活動が組み込まれている。
- 地中海沿岸におけるシエスタ(昼寝)の習慣
- セブンスデー・アドベンチスト派の人々の祈りの時間
- 沖縄の女性たちのお茶の時間
- 2500年前の中国・孔子の教えに「腹八分目」という食事に対する提言がある。
これは満腹を感じるまで食べるのでなく、その80%までにしなさい、という意味だ。
満腹感は30分ほどかかって脳に届く。腹八分目にすることで過食を防げる。
- 野菜中心の食事を心がけること。
豆や木の実(ナッツ)を沢山食べる。
肉や魚、乳製品は食べてもいいが少量に抑えること。
- 適量のお酒をたしなむ程度に飲む人は、飲まない人よりも長生きするという俗説は正しい。
(最近、この考えに反対する意見もあるが、ブルーゾーンの高齢者には赤ワインなどを適量飲む人が多い)
- 健康的な習慣を促進するような社会的グループに参加する。
信頼に基づいた共同体で、きちんとした人達に囲まれている。
- 宗教グループの活動に参加する。
孤独は死につながりやすい。
お互いに助け合うコミュニティで暮らすことは大切だ。
- 父親、母親、兄弟姉妹、祖父母等、家族間の絆が深いこと。
家族を第一に考え 子供や老人の世話をする。
男性が長寿なサルデーニャ島(イタリア)
島には140万人が居ますが、島全体ではなく、ヌオロ県という高地地帯だけがブルーゾーンです。
サルデーニャ島の特徴
- この地方では男性の方が長寿
- アメリカの10倍の100歳以上の人間がいる
- 100歳以上でも非常に活動的
(102歳の老人がバイクで仕事にでかけ、薪割りをし、60歳も若い相手を負かすほど)
サルデーニャ島の生活
- 土地が不毛なため殆どが羊飼いをしていて、規則正しい、低強度の肉体活動をしている
- 食事は殆どが植物性
山に持っていけるような食物
- notamusicaというデュラム小麦で作った非発酵の全粒小麦パン
- トウモロコシで飼育された家畜のオメガ6脂肪酸でなく、草で飼育された動物のオメガ3脂肪酸を多く含むチーズ
- 世界で知られているどのワインよりも3倍のポリフェノールを含むCannonauと呼ばれているワイン
- 歳をとるにつれて人の価値が高まり、その知恵でより賞賛される
- 年老いた両親が家族の近くにいることで、4年から6年分、寿命が伸びる
(祖母効果と呼ばれ、その家族の子供にも良く、子どもたちの死亡率と疾病罹患率がより低くなる)
- 上下構造の家に住み、階段をよく登り下りして、店や教会、 友達の家に全て歩いて行く
- 便利な道具はなく、庭仕事や家事は手作業でやる
- 祈る
世界一の女性長寿の沖縄(日本)
161の小島からなる沖縄群島の本島の北部は、世界一の長寿地域です。世界で最高齢の女性人口が見られます。
沖縄の特徴
- 世界で最長寿の人々が住んでいる
- 疾患無しで、長い時間を生き、眠っている間にさっと他界する
(しばしばセックスの後に)
- 100歳以上の人口はアメリカの5倍
沖縄の生活
- 植物性中心の食生活で、いろいろな色の野菜がたくさん入っている
- アメリカ人の8倍の量の豆腐を食べる
- 過食防止の方法を持っている
- 小さめの皿で食べることで、毎回の食事でのカロリー摂取が控えめになっている
- ファミリースタイルの食卓で、しゃべりながら考えなしに食べ続けるのでなく、カウンターで食事を皿にとり、食卓まで持っていく
- 模合(もあい)という相互扶助システムで、生涯を通じて付き合える6人の友達を持てる社会となっている
(状況が悪い時や子どもが病気の時、親が死んだ時などには 、いつも助けになってくれる誰かがいる)
- 生き甲斐を持っている
(引退がない)
- 102歳の空手の道士の場合、空手道を発展させること
- 100歳の漁師の場合、家族のために週3回、魚を獲ってくること
- 102歳の女性の場合、歳が101歳半、離れている彼女の曾曾曾孫
- 100歳になる女性達は色々な場所に行き、毎日30回も40回も立ったり座ったりする
- 先祖を祀(まつ)っている
多民族のロマリンダ(米カリフォルニア州)
アメリカの最長寿の人口はセブンスデー・アドベンチスト(キリスト教系宗教組織)に多く、カリフォルニア州のロマリンダ周辺に集まっています。
30年間にわたって7万人をフォローした信頼できる研究で、ブルーゾーン計画の根拠を見事に示しています。
ロマリンダの特徴
- 安息日として、金曜の日没から土曜日の日没を定めている
- アメリカの平均的な女性の平均余命は80歳に対してアドベンチストの女性は平均余命は89歳
- 男性では標準的なアメリカ人男性より約11年も長生きする
- 多民族の社会で 白人、黒人、ヒスパニック、アジア系もいる
ロマリンダの生活
- 聖書にある食事法をそのまま実践している
- 毎週の24時間、どんなに忙しくとも、仕事でどんなにストレスがあろうとも、子どもが遊びたがっても、全てを止めて神と対峙し、社会生活にいそしみ、それから信仰と直結した 野外散歩を行う
(毎週、生涯にわたって行われる)
- アドベンチストは他のアドベンチストと付き合う
(アドベンチストのパーティへ行っても、バーボンをがぶ飲みしたりせず、次回の野外散歩について語り、料理法を交換し、そして祈る)
- 祈る
ロマリンダの人々
- 97歳にして、毎月20例の心臓外科手術をまだ行っている大富豪
- 朝は水泳から始め、週末には水上スキーで水しぶきをあげる103歳の現役のカウボーイエドローリングスは現在で、のです
- 一日を重量挙げから始め、自転車にも乗り、キャデラックセビルに乗り、いくつかの組織へボランティアをしに行く104歳の女性
長生きのために本当に何が良いか?
長生きするためには‥‥
- 糖質制限ダイエットをすべきなのか?
- マラソン、ヨガをすべきか?
- オーガニック食品を食べるべきか?
- サプリメントは摂ったほうがいいか?
- ホルモンや抗酸化物質はどうしたらいいのか?
- 精神世界は?
- 世間付き合いは?
調査結果から考えてみると、次のようになります。
健康的な生活スタイルを維持する
- 食事:
- 腹八分目を目安に、過食をしない工夫をする
- 野菜を中心に、豆や木の実(ナッツ)を食べる
(肉や魚、乳製品は食べてもいいが少量に抑える)
- 適量のお酒を飲む
- 運動:
- 日常生活の中でよく体を動かす
(運動する時間を作らなくても、よく動いている)
- 長時間、座ることがない
- 心の静寂:
心を落ち着ける時間や活動が生活に組み込まれている
(シエスタ(昼寝)・祈りの時間・お茶の時間)
- 生き甲斐をもつ:
楽しみを持って生きている
- つながり:
- 家族やコミュニティと助け合いながら暮らしている
- 家族や友達を大切にしている
- 孤独を感じていない
健康的な生活を営む一員である
- 自分の周りの人たち(家族・友人・帰属したグループ・コミュニティ)が健康的な生活スタイルをしている
このような暮らしをしていれば、充実した健康な生活を送ることができ、そして長生きできるようになれると思います。
長寿の秘訣は周囲の人との交流かも
心理学者でハーバード大学で心理学教授のスーザン・ピンカーの研究を参考にしてみましょう。
2015年の「ランセット」誌に 掲載された論文によると
- 先進国ではどこでも女性は男性より
平均6年から8年長生き
- 豊かな国の男性は、女性に比べてどの年齢でも
死亡率が2倍高い
という、興味深い事実があります。
世界で1カ所だけ、男性の寿命が女性と同じ場所があります。
長生きする人が多いサルディーニャ島の生活
それは山深い辺ぴな場所で、男性でも女性でも特に長生きする人が多い地域(ブルーゾーン)の1つ、イタリアのサルディーニャ島。地中海に浮かぶ島です。
イタリア本土とは300キロも離れていませんが、100歳を超える人の割合は6倍です。北アメリカと比べると10倍という高率です。
男女で寿命に差がないのはここだけです。
- 100歳を超えて生きるには何が必要なのか?
- 長寿者のどんな習慣が良いのか?
ブルーゾーンの真ん中にある村で調査に行って気づいたこの村の良さは、街並みの美しさではなく、家が密集していることです。
家と家の間隔が狭く通りや路地が入り組んでいます。つまり住民は常に誰かと顔を合わせる生活をしています。
いつも周囲には、拡大家族と友人たち、近所の人や聖職者、バーや食料品店の店主がいます。
いつも誰かがそばにいたり、立ち寄ったりしています。ぽつんと取り残されて、寂しく暮らす人はいません。
住人は寿命を迎えるまで、ずっと人々に取り囲まれて過ごすのだと、現地に行ってすぐ分かりました。
死亡する可能性を最も減らした要因は何か?
ブリガムヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルト=ランスタッドは一連の研究でまさにこの問いを追究しました。
研究対象は中年の人たち数万人です。
- 食事
- 運動
- 既婚者かどうか
- どのくらい医者にかかるか
- 喫煙や飲酒をするかどうか
など、ライフスタイルのあらゆる面に目を向けました。
こういったすべてを記録し、7年後に、どの人がまだ生存しているかを調べました。
死亡する可能性を最も減らした要因ランキング
- 日々の活動でどれだけ交流があるか (0.6)
- 親しい人がいるかどうか (0.6)
- タバコを吸わない (0.5)
- 飲酒をしない (0.3)
- インフルエンザの予防接種をする (0.25)
- 心臓に問題があったためリハビリと運動をする (0.2)
- 運動をする (0.2)
- 体重が重いか軽いか (0.2)
- 高血圧の治療を受ける (0.1)
- きれいな空気 (0.05)
長寿の可能性が最も高くなる2つの要因は、どちらも社会生活に関わるものです。
(2位)親しい人がいるかどうか
急にお金が必要になったとき借りに行ける相手や、体調が悪くなったとき医者を呼んでくれたり、病院に連れて行ってくれたりする人です。
あるいは絶望して生きる意欲を失いかけたとき、寄り添ってくれる人です。
そういう人が何人かいてくれたら、長生きする可能性がぐんと高まるわけです。
(1位)日々の活動でどれだけ交流があるか
社会的統合と呼ばれる「日々の活動でどれだけ交流があるか」が1位でした。
何人の人と話すか?
これは結びつきが強い人と弱い人の両方についての話で、自分にとって大きな意味を持つ、とりわけ身近な人に限りません。
たとえば
- 毎日コーヒーを出してくれる店員とか、郵便配達の人と話しますか?
- 毎日犬を連れて家の前を通りかかる女性と話しますか?
- ブリッジやポーカーをしたり読書クラブに加わったりしていますか?
こうした交流の有無が、どれだけ長く生きられるかを予測する、最も強い手がかりの1つです。
オンラインではなく、じかに人と交流する効果
じかに顔を合わせていると、神経伝達物質がどっと放出され、ワクチンと同じように、現在のあなたも、将来のあなたも守ってくれます。
単に誰かと目を合わせたり、握手したり、ハイタッチしたりするだけでも、オキシトシンを分泌するのに十分です。
それによって信頼のレベルが高まり、コルチゾール濃度は下がるので、ストレスが軽減されます。
ドーパミンが作られて、気分がいくらか高揚し、痛みが和らぎます。自然のモルヒネのようなものです。
なぜ女性は男性よりも長生きなのか?
大きな理由は、女性の方が生涯にわたって顔と顔を合わせる関係を大事にして維持するということです。
こうした直接的な友人関係によって、病気や衰弱に対抗する生物的なバリアができます。
これは人間だけではなく、霊長目の他の動物にも当てはまることです。
人類学者ジョーン・シルクによるメスのヒヒの研究では、中核となるメスの友だちがいる場合、コルチゾール濃度によるストレスのレベルが低く、長く生きて子孫を多く持つことが分かりました。
このような直接的な交流の力は、社会的関係を維持している人たちの間で、認知症の発症率が低いことに表れています。
乳ガンに罹った女性でも、孤独な人に比べて、生存率が4倍も高いのはそのためです。
脳梗塞になった男性も、仲間としょっちゅう会って、ポーカーをしたり、コーヒーを飲んだり、シニアのホッケーをしたりしていれば、社会的接触が薬以上に体によい影響を与えます。
定期的に人と会うというのは、脳梗塞患者にとって、無理なく実行できる効果的な方法です。
「孤独」は「肥満」よりも危険
ブリガム・ヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルトランスタッドは、2つの膨大なメタ分析(統計的手法を用いて、複数の論文のデータを定量的に結合、分析する)の結果、「孤独」が「肥満」よりも公衆衛生上、深刻な脅威である可能性を示しました。
2つのメタ分析のうち1つは、148の研究、30万人以上の被験者データが対象。
この分析により、社会的な交流のある人は、早期死亡リスクが50%低下することが分かりました。
もう1つの分析では、70の研究、北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアに及ぶ340万人のデータを対象とし、「社会的孤立」、「孤独」、「ひとり暮らし」と死亡率の関係を調べました。
3つの要素全てが、肥満と同等もしくはそれ以上に、死亡リスクを高める傾向にありました。
研究者らは、「孤独」が極めて致命的だと考えています。
- 睡眠パターンの乱れ
- ストレスホルモンの増加
- 炎症の悪化
- 免疫システムの異常
など、多くの問題を引き起こす可能性があります。
これらはいずれも、病気にかかったり、命に関わる怪我をするリスクを高めます。
また次のような別の調査結果もあります。
- 孤独は冠動脈性の心疾患リスクを29%上げ、心臓発作のリスクを32%上昇させる
- 孤独な人はそうでない人より、20%速いペースで認知機能が衰える
- 孤独度が高い人がアルツハイマーになるリスクは、孤独度が低い人の2.1倍
- 孤独は、体重減少や運動による血圧低下効果を相殺する負の効果を持つ
- 孤独な人は、日常生活、例えば、入浴、着替え、階段の上り下りや歩くことなどにも支障をきたしやすくなる
真面目で社交的な人が長生きできる
1500人を80年間追跡調査 米国研究資料「長寿と性格」による研究結果は
性格を変えることで、寿命が変わる
という、それはあらゆる常識を覆すものでした。
長期間にわたって多くの人間を追跡調査し、その人達の性格や人生を分析した本『The Longevity Project』(直訳:長寿計画)に書かれています。
人が長く健康で生きられることには、個人の性格や社会生活などが密接に関係しているという研究結果を示しているのです。
調査が始まったのは1921年。スタンフォード大学のルイス・ターマン教授が当時、10歳前後の児童1528人を対象に性格を分析。
その後どのような人生を歩んでいくのか5~10年おきにインタビューを行う形式で研究を開始しました。
ターマン教授の死後、カリフォルニア大学リバーサイド校特別教授のハワード・S・フリードマン博士が残された資料を基に対象者の追跡調査の継続をスタート。
足掛け80年間にわたる研究の結果を、一般読者向けの平易な医学ノンフィクションとして発表しました。
「長寿の原因」だとされてきた次の幾つかの常識を、調査の結果から、著者であるフリードマン教授はハッキリと否定しています。
- 定期的な医療検査
- 適度な運動
- 薬剤によるビタミン補給
- 積極的な緑色野菜の摂取
- 結婚し続けること
- 困難な仕事を長時間労働しない
- ストレスがない
- 陽気で快活でポジティブな性格
これらは、どれも、長く健康でいるための大切な要素と考えられてきたものばかり。
ところが長寿者の中に、いわゆる健康オタクはいませんでした。
それ以上に、70歳を超えて健在の高齢者には、ある共通する性格があることがわかったのです。
長生きした人は「conscientious(良心的)」な人
この本で判明した「長寿向きの性格」とはどんなものなのか。そのキーワードとなるのが、「conscientious」という言葉です。
日本語に直すと「良心的」「慎重」「丁寧」「念入り」「粘り強い」「計画性がある」といった意味です。
フリードマン教授は、医学界のある常識を覆すものと主張しています。
健康で長生きする人ほど、いわゆる「真面目」な性格を備えているといいます。
「従来、陽気で快活でポジティブな人は長生きをするケースが多く、また、声を出して笑うことは健康にいいと考えられてきました。
だが、私たちの調査の結果、周囲に陽気と思われている人は、むしろ短命だということがわかった。
たとえば、陽気さが売りのコメディアンは、一般の人より短命だというデータがある。
それは彼らが辛い経験を押し隠すために、あえて明るくふるまったり、不健康な生活を送っている人が多いという背景があるからです。
明るく陽気な性格は不健康なライフスタイルにつながりやすく、健康リスクという点からみると、高血圧や高コレステロール並みに危険だといえるのです。」
「社交的な人気者」は早死にする
フリードマン教授によれば、調査対象となった1500人の3分の2が70歳以上まで生き、そのうち24人が、90歳以上となる今も健康に日常生活を送っています。
そして、70歳以上生きた対象者の幼少期における性格診断のデータを紐解くと、
と評価された人より、
- 親からの信頼が厚い
- 間違ったことをしない
- ルールを守る
など、いわゆる「優等生」の印象をもたれた人間のほうが圧倒的に多かったのです。
2001年の段階で、男性の70%、女性の51%が亡くなっています。
故人の中でもっとも多かったのが「conscientious」指数の低い、いわゆる「真面目さに欠ける人」でした。
彼らに共通するのが、「陽気」で「楽観的」との評価を幼少期に受けているということです。
フリードマン教授は、楽観主義は危険だと言います。
「いわゆる楽観主義の人間は、『まあ大丈夫だろう』という慎重さに欠ける判断をあらゆる場面で下している。
その積み重ねが、健康を害する生活習慣につながったり、不注意の交通事故を起こしたりするケースも見られた。
幼少期の性格診断において『社交的な人気者』と教師らから評価された人の中には、大人になってから、人付き合いの手助けとなるアルコールやタバコが過剰摂取気味になり、早死ににつながった事例も多い」
楽観主義とは、「いい加減」とか「無頓着」という意味で、ポジテイブ思考とは別のものと考えなくてはなりません。
寿命を縮めるのはストレスではない
労働と寿命の関係についても書かれています。
仕事はあらゆる人にとって、日常生活における時間の大半を占めるもので、業務上のストレスは、健康に大きく影響を及ぼすと言われています。
仕事で神経をすり減らすより、田舎でのんびりした老後を送った方が長生きできるという考えの人は、決して少数ではないだろう。
「実は、『conscientious』以上に、長寿と密接に関係していると思われるのが、仕事上の成功なのです。
社会的な評価を得続けている人は、真面目な人よりずっと長生きしていることがわかった」
本書では、対象者の一人であり、後にハリウッドの有名映画監督となったエドワード・ドミトリクの生きざまを取り上げています。
子供の頃、母親を亡くしたドミトリクは10代で家を出奔し各地を転々とします。
散々に辛酸をなめたが、持ち前の「辛抱強さ」でじわじわとキャリアを積み重ね、ついに映画監督にまで上り詰めました。
しかし1947年、共産党支持者として連邦刑務所に収監され、その後も離婚、失業と不幸は続きました。
それでも、それから監督業に精を出し、代表作を次々と生み出し、大作を撮り続け、90歳まで生きました。
ドミトリクが受けたストレスがいかに大きかったかは、想像するに難くない。しかしストレスを克服すれば、それが長生きへのプラス材料になりえます。
「私たちの調査でも、悲観的すぎる人間は短命だという結果が出ている。過度のストレスが体に悪いことも事実です。
たとえば、調査対象者のなかには、幼少期、教師に叱られただけで『すべて私のせいだ』と思い込んでしまう少女がいました。
そうした思考の人は、その多くが人生の上でアクシデントを抱え、キャリアにおいて成功をおさめることができなかった。
しかし、ドミトリクはそうしたストレスより、仕事で評価されることを強く望んだ。
言い換えるなら、彼は常に野心や向上心を持ち続け、大変なストレスを感じるような場面でも、決して困難から逃げなかった。
だからこそ、彼は長生きすることができたのです」
愛される必要はない
「今までは、生きていく上で『他者から愛される感覚』が必要だと言われていました。
それが、今回の結果では、愛されている実感は、寿命に直接影響することがなかった。
むしろ知人、友人が多く、定期的に会う相手がたくさんいる人ほど、つまり社交ネットワークが大きい人ほど、長生きできるということがわかったんです」
と、フリードマン教授は主張しています。
「愛されている」ことを実感できる深いつながりより、単純に人と接する機会が多い密な「社会とのつながり」が重要だと言えそうです。
夫婦円満な男性は長生き
男性の長生きの順
- 一人の奥さんと生涯連れ添った男性
(妻と死別した男性は短くなる)
- 生涯独身の男性
- 離婚後、再婚をしなかった男性
対象者の結婚生活に目を向けると、男女において寿命に与える影響が全く違うことが明らかにされています。
「結婚という点で考えるなら、もっとも長命だったのは、一人の奥さんと生涯連れ添った男性で、その多くが70歳以上まで生き、奥さんに看取られて亡くなっています」
この調査で次に長生きするのが意外にも生涯独身の男性。
最も短命なのは離婚後、再婚をしなかった男性で、その65%以上が70歳に達する前に亡くなってしまっています。
そして妻と死別した男性は、そのほとんどが数年後に息絶えました。
一方、女性に関しては男性とはまったく違う興味深い結果が出ました。
夫と離婚しても、あるいは夫に先立たれても、それは彼女たちの寿命にほとんど影響を与えません。
彼女たちは総じて長寿であり、むしろ夫がいなくなってからの方が生き生きと健康になったケースが目立つ。
概して結婚生活の充実が男性にとって重要であるのに対し、女性には大きな影響がないのです。
フリードマン教授が解説しています。
「仕事を持つ男にとって、毎日は戦いの連続ですから、結婚生活の幸せが支えになる。
もともと一人の独身男性はいいのですが、愛する妻に先立たれると多くの旦那さんがガックリきて生きる意欲を失ってしまう。
では女性はどうかというと、重要なのは何とオーガズムの回数なんです。
夫婦間のセックスで、絶頂に達する頻度がより多い人ほど長寿だったのです。理由はまだはっきりしていませんが、興味深いデータです」
この調査から長生きをする性格とは
- 良心的、慎重、真面目
- 逆境に負けない
- 常に仕事に意欲を燃やす
- 夫婦円満
- 社交的
長生きする職業ランキング
職業と寿命の相関関係はあるのかどうか。古い昭和(1926年~1979年)の資料から、各界の著名人の死亡年齢を調べた結果、次のようなランキングが出ています。
- 宗教家(75.6)
- 実業家(73.2)
- 政治家(72.8)
- 医師・医学者(67.7)
- 大学教授(67.7)
- 俳人(67.6)
- 歌人(66.9)
- 芸術家(64.7)
- 小説家(63.0)
- 詩人(57.7)
郡山女子大学の森一教授、工藤倫夫の「職業と寿命の研究」の「各職業集団の平均寿命」より
この期間の職業全体の平均寿命は68.6歳なので、平均寿命を職業全体と各職業で比較すると次のようになります。
- +7.0 宗教家
- +4.6 実業家
- +4.2 政治家
- -0.9 医師・医学者
- -0.9 大学教授
- -1.0 俳人
- -1.7 歌人
- -3.9 芸術家
- -5.6 小説家
- -10.9 詩人
今とは環境が違いますので、参考程度にしかなりませんが、宗教家である「お坊さん」が長寿なのは、奈良時代からのようです。
江戸時代以前の主な高僧の行年
- 法然上人(80歳)
- 明菴栄西禅師(75歳)
- 親鸞聖人(90歳)
- 一休宗純禅師(88歳)
- 白隠慧鶴禅師(84歳)
- 天海僧正(108歳)
明治以降の主な高僧の行年
- 山田無文師(89歳)
- 大西良慶師(109歳)
- 山田恵諦師(100歳)
- 松原泰道師(103歳)
- 宮崎奕保師(108歳)
お坊さんの長寿の秘密
お坊さんは一様に平均寿命だけでなく、健康寿命も長いこととで知られています。
お坊さんの世界では
「70歳、80歳はまだまだ若造。90歳でやっと一人前」
と言われるほど。
規則正しい生活
お坊さんは規則正しい生活を送っていて、体内時計が整い、体への負担が減ります。
精進料理
精進料理には、腸内環境を整えて老化を遅らせる「お粥」や、栄養価の高い健康的な「旬の野菜」が含まれています。
食べすぎることなく、節制しているから健康的です。
瞑想
瞑想を日常的にすることで精神的な安定を得ています。
お経(読経)
お経にはラックス効果があり、読み手・聞き手ともに自律神経のバランスを整えるといいます。
読経よって呼吸器官が鍛えられ、また脳が活性化します。
定年退職がない
定年がない職業なので、生き甲斐を見失いにくく、活動的なので、心身ともに衰えにくいです。
早死にする職業
イギリスの有名な研究では、公務員を4階層に分けると1番の上位階層と比べ、1番下位の階層の突然死のリスクは4倍高いという結果が示されました。
過重労働
深夜までの残業や徹夜がある長時間労働の職業は、身体的負担が大きいです。
- 広告代理店の営業
- 商社マン
- 外資系生保の営業
- WEBディレクター
- SE(システムエンジニア)
- 飲食店店長
- 美容師
勤務時間が不規則・夜勤
不定期に夜勤があるような仕事は健康に負担です。
- 看護師
- 外科医
- 介護士
- タクシー運転手
- 長距離トラック運転手
- 電車・バスの乗務員
- ホスト
- 消防士
- 現場作業員
過剰飲酒・食べ過ぎ
接待など仕事で飲酒する機会が極端に多い場合は、身体に負担が大きくなります。
- ホスト
- 広告代理店の営業
- 商社マン
- グルメレポーター
長時間座りっぱなし
長時間座ったままだと、運動不足と脚の血管を締めている状態が続くため、血管に関わる病気になるリスクが上がります。
- タクシー運転手
- 長距離トラック運転手
- バスの乗務員
- SE(システムエンジニア)
過度のストレス
早死にした人の生活環境
- 部屋にモノが多い
- 部屋に人(妻)を入れない
- カップ麺などのゴミが多い
- 昼も遮光カーテンを閉めっぱなし
- 親と連絡を取っていない
- 妻(既婚者)とうまくいっていない
- 休みの日は人と話さずに過ごす
- ゲームを際限なくやってしまう
- 収集癖がある(オタク、凝り性)
- 年収に関係なく貯金がない