マウスに自然環境音を聴かせながら飼育したところ、平均寿命が最大17%延長しました。
マウスと人間では可聴域が異なるため、今回の結果を人間にそのまま当てはめることはできません。
しかし、人間もかつては大自然の中で暮らして、自然環境音に接していました。
自然界の豊かな音が流れる環境は、ストレス解消に役立つばかりではなく、寿命延長につながるかもしれません。
あなただけのストーリーをデザインする道具箱
マウスに自然環境音を聴かせながら飼育したところ、平均寿命が最大17%延長しました。
マウスと人間では可聴域が異なるため、今回の結果を人間にそのまま当てはめることはできません。
しかし、人間もかつては大自然の中で暮らして、自然環境音に接していました。
自然界の豊かな音が流れる環境は、ストレス解消に役立つばかりではなく、寿命延長につながるかもしれません。
2018年に、国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所と、公益財団法人 国立科学振興財団(FAIS)情報環境研究所の共同研究グループが発表しました。
生後8週齢のマウスを、3グループに分けて、3つの環境で飼育しました。
音響再生装置と赤外線カメラが一体化したスピーカーを設置した飼育用ケージを用意。
各グループとも、オス16匹とメス16匹の合計32匹を、1ケージ4匹ずつに分けて、オス・メス別々に1,000日以上飼育しました。
なお、自然な状態での寿命を調べるため、音を聞かせる・聞かせない以外に、マウスにストレスや負担を与える採血などの検査は、一切行いませんでした。
その結果、(2)の狭帯域の音響グループで飼育したマウスは、対照グループで飼育したマウスに比べ、平均寿命が有意に延長(約17%)することが分かりました。
(1)の広帯域の音響グループのマウスは有意差こそなかったが、対照グループに比べ平均寿命は約7%延長しました。
生存曲線を比較すると、どの条件でも最長寿命はほぼ同じでした。
マウスが死に始めるのは、対照グループが最も早く、環境音を提示した2つのグループでは、最短寿命が延長することが分かりました。
個体の寿命を詳しく解析したところ、特にオスでは、2グループとも対照グループに比べて最短寿命が有意に延長し、寿命のばらつきも小さくなることが分かりました。
自然音環境の2グループでは、マウスの自発活動量も有意に増加していました。
そこで自発活動量について調べましたが、寿命との間に有意な相関は認められなかったといいます。
よって、寿命活動の主要な要因は、自発活動量の増加以外にあると研究グループは結論付けています。
コミュニケーションに主に用いる帯域の高周波にさらされた広帯域の音響グループより、
さらされなかった狭帯域の音響グループのほうが寿命が長かったことから、
自然環境音の高周波が、マウスの長生きにつながるわけではないことが明らかになりました。
研究グループは、「マウスの実験結果を短絡的に人間に当てはめることには慎重である必要がある」と前置きした上で、
「マウスの平均寿命が有意に延びた狭帯域音響条件には、マウスが聴覚で感じて鳴き声として使用する主な帯域が含まれていない。
人間を含む動物に音環境が与える影響を考える時には、意識で捉えることのできない成分にも注意を払う必要があるだろう」としています。