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細胞を一新:オートファジー(自食作用)

細胞が自分を食べる・・・

ギリシャ語でauto-は「自分自身」を表す接頭語、phagyは「食べること」です。

オートファジー(自食作用)と命名された現象は、細胞が自身の中にあるタンパク質を食べて、アミノ酸に分解しています。

飢餓状態を生き抜くために自己消化することで栄養源を確保する、また細胞内を浄化するリサイクルシステムです。

細胞内を浄化

細胞内の変性タンパク質や不良ミトコンドリア、さらには細胞内に侵入した病原性細菌などを分解して浄化することで、さまざまな病気から生体を守っています。

飢餓時だけではなく細胞内の不要なタンパク質を取り除く恒常的な役割を持っています。

栄養源を確保

飢餓状態(栄養が足りていない状態)になったときに、過剰なタンパク質を分解してアミノ酸を作り、生存に必要なタンパク質にリサイクルします。

タンパク質を分解するため仕組み

細胞質の一部が膜で囲われ(オートファゴソーム)、そこにさまざまな分解酵素を含んだ小器官(リソソーム)が融合すると(オートリソソーム)、中身のタンパク質が分解され、アミノ酸となります。

不要なものを選択的に分解する

オートファジーは、タンパク質だけでなく、脂質やミトコンドリアなど、何でも分解することができます。

ただし、必要なときだけに始まり、不要なものを選択的に分解するように高度に制御されています。

オートファジーの役割

  • 細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防ぎ、細胞内をきれいに保つ
  • 過剰にタンパク質合成したときや栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルをおこなう
  • 細胞質内に侵入した病原微生物を排除する
  • 癌、神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症など)、心血管疾患、肺疾患、感染症など、さまざまな疾患に関わっているとされている

オートファジーを活発にさせるには?

絶食をすると飢餓状態の栄養補給のために、全身でオートファジーが活発になります。

分解し過ぎて細胞が死に至ることは、普通はありません。

何でも分解できてしまう危険な仕組みが必要なときだけに始まり、不要なものを選択的に分解するように高度に制御されています。

3種類のオートファジー

  1. マクロオートファジー
  2. ミクロオートファジー
  3. シャペロン介在性オートファジー

オリーブオイルがオートファジーを活性化させ、認知症を防ぐ

オリーブ果実を搾ってろ過しただけで、化学的な処理を行っていないそのままのエキストラバージンオリーブオイルに、認知症の発症を防ぐ効果があることが明らかにされました。

研究をおこなったのは、アメリカの米テンプル大学医学部(ルイス・カッツ校)の研究チーム。

アルツハイマー病の遺伝子が組み込まれていて、将来アルツハイマー病が発症するマウスで実験をおこないました。

アルツハイマー病は、「記憶障害」「脳のアミロイド班」「脳の神経原線維変化」の3つの主要症状があらわれます。

このマウスに「エキストラバージンオリーブオイルを豊富に含むエサ」を与えるとどう変化するか?

主要症状の発症が抑えられるのか、などを調べました。

※アミロイド班:アルツハイマー病で、アミロイド前駆体タンパク質の断片が神経細胞間に蓄積し、神経細胞同士のコミュニケーションを阻害する

※神経原線維変化:健康な脳組織では栄養物などを運ぶタウたんぱく質が、アルツハイマー病では細胞のなかで絡まり、栄養が滞って細胞が死んでしまう現象(リン酸化)

オリーブオイルを与えたマウスは認知機能が高い

オリーブオイル与えてから3か月目と6か月目に、記憶力や学習能力を調べる認知機能テストをおこないました。

その結果、オリーブオイルを与えたマウスは、オリーブオイルを与えていないマウスと比べて、認知機能が高いことが明らかになりました。

さらに、脳の組織を調べた結果、オリーブオイルを与えたマウスはアルツハイマー病の原因とされるアミロイド斑が少なく、神経細胞同士のコミュニケーションを促す細胞間の連接部であるシナプスは、非常に良好な状態で保持されていることがわかりました。

オリーブオイルを与えたマウスは、アミロイド斑などの細胞内で不要なタンパク質を分解して再利用するためのオートファジーが活性化しています。

そのため、アルツハイマー病の発症の引き金となるアミロイド斑を減らすことができ、神経原線維変化の改善していたと考えられます。

これらの結果はマウスを用いたものですが、ヒトでもこのようなメカニズムが起る可能性が推察されます。

7章 若返り