健康ライフGame

あなただけのストーリーをデザインする道具箱

若返りの薬と期待:NMN

NMN(β-NMN)は、ニコチンアミド モノヌクレオチドの略称で、すべての生物の細胞の中に存在する補酵素です。

本来は体内で自然に生成されていますが、加齢にともない体内でのNMNを生成能力が低下します。

その結果、体内の修復機能が失われていくと言われています。

期待される若返りの効果

米ワシントン大の研究で、マウスにNMNを混ぜた飲み水を与えたところ、抗老化作用が期待できる結果がでています。

NMNは老化を防ぐだけではなく、他にも

  • 血管と血圧の状態を改善する
  • 肥満を改善する
  • 脳疾患を予防する
  • アルツハイマー病を回復する
  • 糖尿病を防ぐ

などの効果が期待されています。

NAD+の加齢による減少

加齢によりNMNの生成能力が低下すると、NMNから合成される補酵素のNAD+(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)が減少します。

NAD+の減少により「細胞核の損傷」や「ミトコンドリアの活性低下」が進むなど、体の様々な機能が衰えると考えられています。

NMN投与によるNAD+の増加

マウスにNMNを混ぜた飲み水を与えたところ、わずか2分半でNMNの血中濃度が上昇しました。

15分経つと血中から消えてしまいましたが、同時に肝臓の中のNAD合成量が増加しました。

このことから
「経口投与すると、NMNは素早く腸内で吸収され、15分ほどで組織に移行して、NADに変換される」
ということです。

食物中に含まれるNMN

食物には、野菜やフルーツ、タネ類に比較的多く含まれ、枝豆、ブロッコリー、アボカドなどの野菜やフルーツに含まれています。

牛肉やシーフードにはあまり含まれていません。

マウス実験で投与した100mg/kgは、人に換算すると約8mg/kgに相当します。60kgの人なら約480mgとなります。

野菜やフルーツでは、100g食べても含有量は2mgに満たないので、抗老化の作用においては、量的に少ないですが、

食物から体に吸収されたNMNが、NAD+の生合成と多くの生理学的機能を維持するのを助けとなるのが期待されています。

食物中に含まれるNMNの量
食物名 NMN
(mg/100g)
枝豆 0.47~1.88
ブロッコリー 0.25~1.12
キュウリ(種) 0.56
キュウリ(皮) 0.65
キャベツ 0.00~0.90
アボカド 0.36~1.60
トマト 0.26~0.30
マッシュルーム 0.00~1.01
牛肉(生) 0.06~0.42
エビ 0.22

NMNが老化の抑制に

米ワシントン大の今井真一郎教授らの研究グループが、マウスを使った実験で、NMNが細胞内に取り込まれる仕組みを、解明しました。

これまでの研究で、NMNを飲み水に混ぜて与えたマウスは、

  • 通常に比べて「中年太り」による体重の増加が約1割少なくなる
  • 加齢に伴うエネルギー代謝の低下などが抑えられる
  • 血糖値を下げるインスリンの効き方の悪化や、骨密度の低下といった老化現象が抑えられる

ことなどが確認されています。

また、投与による副作用はみられなかったといいます。

今回の研究で、特殊なたんぱく質にNMNを細胞に取り込む働きがあることを発見しました。

また、細胞の中のNADが減少すると、このたんぱく質を増やそうとするメカニズムがあることも分かりました。

NMNを摂取することに加えて、このたんぱく質の働きを高めることができれば、加齢にともなう様々な現象を抑えられる可能性があるといいます。

エネルギー代謝の低下が抑えられる

マウスに投与量は1日あたり100mg/kgと、300mg/kgの2つの用量を、飲み水に溶かしてNMNを与えるという経口投与で、1年間の投与実験をしました。

マウスの寿命は2年ほどあり、マウスも年を取ると代謝が落ちます。

しかし、NMNを投与した17カ月齢と11カ月齢のマウスの酸素消費量を比較すると、酸素消費量があまり変わらない。

つまり、NMNを投与しているグループは6カ月若い状態になっていました。

中年太りが少なくなる

マウスも人間と同様に老化すると体重が増えるのですが、特に、オスの場合は脂肪が増えます。

ところが、NMNを溶かした水を飲んでいたグループは、普通の水を飲んでいたマウスと比べると、

  • 100mg/kg/日:4%、
  • 300mg/kg/日:9%

の体重減少が見られました。

70kgの男性だと、100mg/日で3kg弱、300mg/日で6kg以上やせるという計算になります。

老化に伴う作用の減少

今回の実験で目の機能も調べました。使用しているマウスは年を取ると目の網膜に炎症が起きます。

ところが、100mg/kg/日と300mg/kg/日を与えたマウスは、炎症がなくなっていました。

調べたところ、網膜の視細胞の機能が向上していました。

年を取ると涙が出にくくなりますが、涙の量もNMNを与えていないマウスよりも増えています。

その他にも、骨密度が増えるということが分かりました。

今回の実験では直接評価していませんが、免疫機能も回復するということが予想されています。

マウスによる実験では老化に伴う様々な機能低下が、NMNの投与によって食い止められるということです。

NMNを摂取する

現在、NMNについて世界中で研究が続けられています。

既にサプリメントなど、NMNを配合した健康食品が販売されていますので、マウスの実験で投与した量に値するNMNを、摂取することもできます。

ヒトでの臨床研究が短く、科学的根拠は裏付けが十分ではありませんが、加齢や病気に対抗するための「若返りの薬」としての期待は高まっています。

7章 若返り