DHEAは、デヒドロエピアンドロステロンの略称で、副腎や性腺で産生される男性ホルモンの一種です。
生体内でコレステロールを原料として生合成される性ステロイドホルモンであり、男女問わず体内に豊富に存在します。
血液中を流れていますが、20代をピークに血中濃度は徐々に低下していく、年齢とともに減少していくホルモンです。
老化プロセスを遅らせたり止めたり、あるいは若返らせる「若返りホルモン」や「長寿ホルモン」などと言われ、アンチエイジングや生活習慣病予防の観点からも注目を集めています。
DHEAの作用
DHEAは、若返りホルモンとも呼ばれ、筋力を保ったり、動脈硬化や脂質異常症を改善する働きがあります。
体の中で炎症を抑えたり、インスリンの働きを助けて糖尿病になるのを防ぐなど、様々な働きを持つホルモンです。
DHEAを増やすことで、以下の症状に効果があるとされています。
- 副腎疲労
- 循環器病
- 糖尿病
- 高コレステロール症
- 肥満
- 合併性硬化症
- パーキンソン病
- アルツハイマー症
- 免疫不全症
- うつ病
- 骨粗鬆症
マザー・ホルモン
DHEAはテストステロン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)をつくる材料になります。
他にも50種類以上ものホルモンに変換されます。このことからDHEAは「マザー・ホルモン」とも呼ばれています。
DHEAの分泌が減る影響
老化が進みやすくなる
DHEAが若返りホルモンとも呼ばれることからも、DHEAは老化に影響があります。
精神的・肉体的ストレスを受けると、体内では血糖値や血圧を上げるホルモン「コルチゾール」が分泌されます。
コルチゾールの主な働きは、
- 肝臓での糖の新生
- 筋肉でのたんぱく質代謝
- 脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進
- 抗炎症および免疫抑制
など、生体にとって必須のホルモンです。
ストレスにより体は防御反応として、筋肉を収縮させて緊張状態となります。
コルチゾールが分泌され、血管が収縮して、血流が良い状態(血液の少ない虚血)となります。
緊張が解けると、役割を終えたコルチゾールが分解される時、有毒である酸化力の高い活性酸素(ヒドロキシルラジカル)を大量に発生させます。
DHEAはこのコルチゾールの分泌を抑える働きを持っています。
ですから、DHEAが減ると体内の活性酸素が増えて血管の機能も弱まり、老化が進みやすくなるのです。
またDHEAが減ることで「ストレスホルモン」とも呼ばれるコルチゾールの分泌が慢性的に高くなると、
- うつ病
- 不眠症などの精神疾患
- 脳の海馬を萎縮
- 生活習慣病
などのストレス関連疾患の原因となります。
記憶力や思考能力が衰える
DHEAの血中濃度が低い人は、認知機能が低下することがわかっています。
DHEAが減ることで、コルチゾールが高くなり、脳の海馬を萎縮するなど影響が出ます。
単語を覚えたり、ちょっと前の出来事を思い出したりする能力が衰退してきます。
肥満になりやすくなる
DHEAは、成長ホルモンの分泌を促し、筋力を維持し、身体の代謝を高める働きをしています。
またDHEAは、血糖値を下げると同時にインスリン抵抗性を改善して、インスリンの働きを助け、糖尿病を予防します。
DHEAの分泌が低下することで、脂肪がつきやすくなり肥満体型となったり、糖尿病になるなど生活習慣病にかかるリスクも高まります。
免役力が落ちる
免疫機能を活性化する働きを持っていることから、DHEAが減ると免疫力が低下します。
風邪にかかりやすくなったり、治りにくくなったりします。
うつ症状が出る
DHEAを分泌している副腎が疲労すると、うつ症状が出ることがあります。
DHEAには、ストレスを緩和し、意欲を向上させる、アルツハイマー病を予防、改善する効果があります。
うつ病の人もDHEAの値は低いのですが、副腎疲労によってもDHEAが低下し、無気力になったり絶望感を感じやすくなったりします。
DHEAを増やすために必要なこと
残念ながら年齢とともに減少してしまうDHEAですが、日々の生活習慣を改善することで分泌を促進できます。
重要なポイントは副腎の働きを高めること、運動することです。
副腎の働きを高めるには?
質のよい睡眠をとる
ホルモンの分泌にとってなによりも大切なのは、
「太陽の光を浴びて目覚め、昼は活動して、夜はぐっすり眠る」
という基本的なサイクルです。
朝は活動的になり、夜はリラックスするという自律神経のリズムに合わせて生活すると、ホルモンの分泌が正常化します。
また睡眠が十分でないと、ストレスがたまり続ける原因にもなり、コルチゾールの分泌が増えてしまいます。
DHEAだけでなく、睡眠に関するホルモン・メラトニンやセロトニンの分泌が減少してしまい、睡眠の質の低下につながります。
カフェインやアルコール、喫煙は控える
カフェインやアルコールの取り過ぎは副腎に負担をかけて機能を低下させます。睡眠の質も低下します。
コーヒーやお茶、コーラなど、カフェインを含む飲み物やお酒の飲み過ぎに気をつけましょう。
喫煙も身体に負担をかけます。
ストレスを溜めない
ストレッチや軽い運動などを継続して行い、日頃からストレスを溜めないように留意し、副腎を労わりましょう。
また、きつい運動はむしろ肉体的ストレスにつながりますので控えます。
自然に囲まれてリラックスしたり、歌や音楽を楽しんだりする過ごし方もよいでしょう。
時間がとれないときは、腹式呼吸がおすすめです。
「鼻からゆっくり息を吸い、口からゆっくり吐く」
を繰り返しましょう。
食生活を整える
外食やコンビニ食などを日常的に続けていると、副腎疲労が進んでしまいます。
甘いものや精製された小麦粉や米など、糖質を多く含む食品を中心にした食事は、血糖値を急激に上げてしまいます。
すると、血糖値を下げる唯一のホルモン・インスリンの分泌が盛んになり、副腎疲労に対してもよくありません。
甘いものや精製された物は控えめにして、質のよいタンパク質や脂質、食物繊維を意識して摂取しましょう。
食べるときは、
- 食事の最初に野菜を食べる
- ゆっくりよく噛んで食べ、早食いをしない
- 大食いを避ける
などを実践して、食後の血糖値が急激に上がらないように注意しましょう。内臓にも負担がかかりません。
副腎疲労の回復には、ビタミンCやビタミンB5、ナイアシンも積極的に摂りましょう。
食材では、自然薯や長芋などのヤムイモや、納豆、黒豆、アボカド、魚介類がお勧めです。
- オメガ3系脂肪酸を含むイワシ、アジなどの青魚
- 解毒作用があるといわれるニンニクや玉ネギ、ショウガ、パクチーなどの香味野菜やハーブ、スパイス
- フィトケミカルが含まれる様々な色の緑黄色野菜
- ビタミンB群とミネラルを含む玄米、豚肉、卵
- 副腎の正常な働きに欠かせないナトリウムやカリウム、新陳代謝を良くして免疫を調整する亜鉛、ホルモン代謝に必要な酵素を助けるマグネシウム、イライラ解消に良いカルシウムなどの栄養素を含む、海に生息するミネラル豊富な貝類、海藻類
- デトックスに必要な1日1.5~2リットルの水、水分(こまめに分けてとる)
副腎を疲労させないように体内の炎症を減らすため、なるべく避けたい食材もあります。
- 小麦や大麦、ライ麦などに含まれる「グルテン」
- 乳製品に含まれる「カゼイン」
- 血糖値が急上昇すると「甘い菓子」「精製された穀物」
- 農薬使用や遺伝子組み換えのもの、添加物、化学合成物質などを含む食べ物
(ソーセージ、ハムなどの加工食品、ジャンクフード、スナック菓子)
DHEAの分泌を増やす運動
下半身の筋肉を活用し、軽い負荷のかかる程度の運動が、DHEAを増加させるのに効果的だといわれています。
- 坂のある道をウォーキング
- エレベーターのかわりに階段を使う
- 通勤などの電車やバスでイスに座らずに立っている
- 速歩きをする
- 1日5~10分程度の軽い筋力トレーニング
- スロースクワット
- サイクリング
- ジョギング
- 水泳
DHEAサプリメント
最近では海外からのDHEAサプリメント(日本では医薬品に指定されていて、現在、国内では製造されていません)も出回っています。
DHEAはステロイドホルモンですので、増やせば増やすほど良い、というわけではありません。
摂りすぎると、倦怠感やニキビ、不整脈などの副作用が起こることもあります。
ほかにも肝機能障害などのほか、前立腺がんや乳がんの場合にがんを進行させるリスクがあるともいわれています。
オリンピックなどの競技においてDHEAは筋肉増強剤として禁止成分に指定されており、使用するとドーピング検査では陽性になります。
安易にサプリメントを取り入れる選択をせず、まずは日常生活の見直しからはじめましょう。