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ブルーライトは危険なのか

スマートフォン(スマホ)など、LEDを用いた液晶画面の光に多く含まれるブルーライトは、目や体に悪影響を及ぼすのか。

2018年に、ブルーライトの刺激によって、目の細胞は傷つく可能性がある、という報告がありました。

Scientific Reports誌に掲載された論文をきっかけに

  • ブルーライトで失明が早まる
  • スマホのブルーライトでは失明しない
  • ブルーライトは視力に影響しない

など、様々な報道が相次ぎました。

ブルーライトが角膜や網膜といった目の組織に与える影響はまだよく分かっていないため、慎重な検討が必要です。

夜のブルーライトは悪影響

ブルーライトは、体内時計(サーカディアンリズム)を整える、健康を維持する上で重要な役割を果たしています。

夜のブルーライトが、メラトニンの分泌を減少させ、体内時計を狂わせます。不眠症などの睡眠障害の原因となります。

これは、数種類のがん(乳がん、前立腺がんなど)や糖尿病、心臓病、肥満などさまざまな生活習慣病の発症リスクを高める要因の一つとされています。

ブルーライトの暴露量が増加

約20年前と比較し、省エネ化でLEDが普及したことにより、日常生活におけるブルーライトの暴露量が増えています。

ブルーライトは強いエネルギーを持つ光

ブルーライトとは、波長が380nm~500nm(ナノメートル)の青色光のこと。太陽光に含まれています。

電磁波のうち、ヒトの目で見ることのできる光=可視光線(400nm~800nm)の中で、もっとも波長が短く、もっとも強いエネルギーを持っています

400nmより短くなると紫外線、700nmより波長が長くなると赤外線と呼ばれます。

私たちの目の角膜や水晶体は、およそ350nm~800nmの波長を透過させますが、それより外側の電磁波(光)は透過できません。

網膜に到達する光の中で、紫外線にもっとも近い強いエネルギーを持つ光が、ブルーライトです。

LEDは、460nmの波長を持つブルーライトを主な光源としています。

スマートフォンやパソコン、ゲーム機、テレビなどのLEDディスプレイや、LED照明が普及したことにより、ブルーライトの暴露量が昼夜問わず増えています。

眼や身体に大きな負担をかける

VDT(デジタル ディスプレイ機器)から発せられるブルーライトは、眼や身体に大きな負担をかけると言われています。

長時間にわたるVDT作業が、眼精疲労やドライアイを招くことはよく知られています。

厚生労働省のVDT作業におけるガイドライン(2002年に改訂)では、長時間連続で見続けないように推奨しています。

  • VDT連続作業時間が1時間を超えないようにする
  • VDT連続作業時間とVDT連続作業時間の間に、10~15分程度のVDT作業休止時間を取る
  • VDT連続作業時間内でも1、2回程度の小休止を設ける

ブルーライトは、波長が短いため、散乱しやすい性質を持っています。

これが眩しさやチラつきなどの原因になり、その分、脳はピント合わせに苦労します。

また、ブルーライトは他の光よりもエネルギーが強いため、瞳孔を縮めようとして目の筋肉も酷使され、眼の疲れや肩・首の凝りなどに影響します。

そのため、LEDディスプレイの普及により、VDT作業では、長時間の使用を控える以外にも、

  • ディスプレイの輝度・コントラスト設定を調節する
  • ブルーライトをカットするフィルターやメガネを使用する

といった工夫をすることが望ましいです。

ブルーライトの網膜への影響

ブルーライトは、角膜や水晶体で吸収されずに、網膜まで到達します。また

目をカメラにたとえると、
角膜:フィルター
水晶体:レンズ
網膜:フィルム
といえます。

私たちは、外界で散乱している「光」を、フィルターやレンズで屈折させ、網膜に集めることで初めて「モノを見る」ことができます。

ところが、紫外線やブルーライトのような強い光は、角膜や水晶体で吸収されず、ストレートに網膜に達してしまいます。

紫外線やブルーライトを浴び続けると、光受容体である網膜の中心部にある「黄斑」がダメージを受け、加齢とともに増える眼病「加齢黄斑変性」の原因になる場合があります。

加齢黄斑変性は、アメリカでは65歳以上の失明原因の第1位。

日本でも近年急速に増加しつつあり、LEDディスプレイによって暴露するブルーライト増加の影響が指摘されています。

子どもの目は影響を受けやすい

成長過程にある子どもは、目の水晶体が透明でにごりがないため、大人の目以上にブルーライトの影響を受けやすいと考えられます。

ゲームに熱中して、スマートフォンやゲーム機の画面を見続けると、かなりのブルーライトを暴露してしまうことになります。

子どもの目を守るために、ブルーライト対策をおこなうことをおすすめします。

睡眠への影響

夜のブルーライトが、体内時計(サーカディアンリズム)を狂わせて、睡眠に影響を与えます。

生物はみな体内時計を持っていて、ヒトの場合は、日の出とともに目覚めて活発に活動し、日が沈むと脳と身体を休めるというのが、健康を維持するためのリズムです。

体内時計が狂うと、自律神経系や内分泌系、免疫系にも悪影響を及ぼします。

睡眠の質を低下や不眠症の原因となり、数種類のがん(乳がん、前立腺がんなど)や糖尿病、心臓病、肥満など、さまざまな生活習慣病の発症リスクが高くなる可能性があります。

体内時計を24時間にする

体内時計(サーカディアンリズム)は個人差がありますが、平均の長さは24時間と4分の1時間です。

朝の光を浴びることによって調整される中枢時計と、食事を摂ることによって調整される末梢時計があり、24時間に調整しています。

この2つの体内時計のリズムがずれてくると、身体の様々な機能がうまく働かなくなってしまいます。

体内時計が乱れる生活を送らざるをえないシフトワーカー(交代勤務者)は、夜食や間食など不規則な食生活を送る傾向にあるので、食事には特に注意が必要です。

睡眠を司るホルモンの分泌

ヒトの目の網膜には、460nm(LEDの主な波長)という強いエネルギーを持つ光のみに反応する光受容体があり、サーカディアンリズムをコントロールする役割を果たしています。

網膜が強いブルーライトの刺激を受けると、脳は朝と判断し、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され覚醒します。

ブルーライトの量が減少すると、脳は夜と判断して、メラトニンの分泌が活発になります。

ブルーライトの放出量はデバイスごとに異なりますが、中でもスマートフォン、ゲーム機、パソコンはブルーライトの放出量がとくに多く、注意が必要です。

夜遅くまでLEDディスプレイを見ることで、ブルーライトを浴びる生活は、メラトニンの分泌が抑制されてしまいます。

ハーバード大学の研究では、どんな種類の光でもメラトニンの分泌を抑制しますが、ブルーライトは同程度の明るさの緑色光の約2倍もメラトニンの分泌が抑制されました。

それぞれの光を6.5時間浴びたとき、緑色光が1.5時間ずれたのに対して、ブルーライトは3時間と2倍もサーカディアンリズムがずれました。

夜のブルーライト対策

夜のブルーライトの危険性に対する有効な対策として、ハーバード大学医学院は以下の項目があげています。

  1. 夜の照明には薄赤色の照明を使う
  2. 寝る3時間前から明るい画面を見ない
  3. 夜にLEDディスプレイを使用するときは、ブルーライトカットメガネを着用するか、ブルーライトを軽減するフィルターアプリを使う
  4. 日中にたくさんの明るい光を浴びることは、睡眠の改善、精神の安定、注意力、反射神経、脳の様々な機能の向上に有効とされているため、日中は光を浴びる

肥満になりやすい

体内時計(サーカディアンリズム)が乱れることで、太りやすくなります。

血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが低下し、糖尿病のリスクが高まります。

夜間に光を浴びると太りやすくなる

マウスによる実験では、通常の光環境で過ごしたマウスと、夜間に光を浴びたマウスに、同じカロリーの食事を与えました。

すると、夜間に光を浴びたマウスのほうが太りやすかった、という研究報告もあります。

食べるタイミングにより太りやすくなる

別の研究では、夜行性のマウスの場合、同じ量を食べても夜だけ食べていたほうが肥満になりにくかったのです。

食べるタイミングによっても、サーカディアンリズムが乱れて肥満を招く可能性があることが示唆されています。

高血圧になるリスクが上がる

朝、太陽の光を浴びると、副交感神経が高まって血圧が上昇します。夜になると血圧が低下します。

体内時計(サーカディアンリズム)が狂うと、この血圧のリズムにも乱れが生じます。

癌になるリスクが上がる

夜間勤務の多い看護師や国際線の乗務員のように、体内時計(サーカディアンリズム)が乱れやすい職場で働く女性の場合、乳がんの発生率が非常に高いことがわかっています。

シフトワーカー(交代勤務者)は、日勤労働者と比較して、脳卒中などの冠動脈疾患での死亡リスクが2倍以上、がんのリスクでは、前立腺がんが3.5倍、乳がんが2.6倍という統計データがあります。

別の研究で、交代制勤務の仕事に3年以上就いた50歳以上の女性は、乳がんの発生リスクが4.3倍になるというデータも報告されています。

他にも、サーカディアンリズムの乱れと癌発生の関連性を示すデータは数多く発表されています。

2007年には、WHO(世界保健機関)関連機関であるIARC(国際がん研究機関)は、「深夜におよぶシフトワーク(交代勤務)を発がんリスクが高い危険因子」とみなしています。

癌とブルーライトとの直接的な関連性についてはまだ明らかにされていません。

ですが、少なくともブルーライトがメラトニンの分泌量をコントロールしていて、サーカディアンリズムに大きな影響を与えています。

癌予防の観点からも、夜にブルーライトを浴びないように、生活環境を検討していく必要があると言えるでしょう。

太陽光や紫外線の影響

太陽を直接見ると、強烈な光によって網膜がダメージを受けてしまいます。

慢性的な紫外線暴露が、白内障や翼状片の原因になります。

5章 病気