高血圧の原因を見つける
血圧ってなに?
血圧は、心臓から送り出された血液が、血管を押す圧力を指します。
酸素や栄養を全身の細胞に届けるため、血液が体内をめぐり続けています。
この血液を流すために、心臓がポンプの役割をして、収縮をくり返すことで、血液が流れています。
血管を流れる血液の勢いが強ければ、それだけ血管に力がかかります。この力が血圧です。
血圧を測定するときは、収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)を測ります。
最高血圧(収縮期血圧)は、心臓が収縮して血液を送り出すときに血圧が最も大きくなり、このときの血圧を指します。
ポンプを押し出した状態の血液の流れの強さのことですね。
最低血圧(拡張期血圧)は、心臓が拡張して次に送り出す血液をためこむには、血圧が最も低くなり、このときの血圧を指します。
今度はポンプを引いた状態の血液の流れの強さのことです。
血圧は、
- 心臓が送り出す血液の量(心拍出量)
- 血管のしなやかさ(弾力性)
- 血管の収縮など血液の流れに対する抵抗の強さ(血管抵抗)
など、様々なことが影響して変わります。
また、血圧は腎臓や神経などの働きにより調節されているので、食塩の摂取量も大きく影響しています。
血圧は普段の生活習慣も深く関係しています。
血圧はちょっとしたことで変わる
血圧は一定ではなく、日常生活や生活環境のちょっとしたことで変わります。
- 体を動かす
- 寒さを感じる
- 食事をする
- お酒を飲む
- 睡眠中
- 睡眠不足
- 精神的ストレスを感じている
- 緊張している
- リラックスする
- 外食する(塩分をとり過ぎ)
- タバコを吸う
- 体重が増加する
例えば、運動をすると血圧は一時的に上昇しますが、運動後、安静にすることで血圧は下がります。
こうした一時的な血圧上昇は、正常な血圧の変化であり、高血圧とはいいません。
高血圧とは、安静状態での血圧が、慢性的に正常値よりも高い状態をいいます。
血圧の一日のリズム
高血圧の人でも、正常な血圧の人でも、血圧は常に変動していて、一日単位でも血圧変動リズムがあります。
睡眠中の血圧は低く、起床とともに上昇していきます。
日中の活動時間の血圧は高く、活動量が低下する夕方から夜にかけて再び低下していくというリズムが基本です。
- 睡眠中:低い
- 起床:上昇
- 日中:高い
- 夕方:低下
季節による血圧の変化
1年のうちで血圧が変動するのは、季節の変わり目、特に寒くなる12月から2月に高くなります。
春から夏の気温が上昇している季節には血圧は下がり、秋から冬にかけて気温が低下する季節には血圧は上昇する傾向にあります。
冬場の血圧上昇は、寒さによる血管の収縮や、血圧を上げることによって体温を維持しようとする体の働きに加え、運動量が減少したり塩分の多い食事が増えたりすることも理由として考えられています。
高血圧になる要因
一般に日本人の高血圧の特徴として挙げられているのが、
- 食塩摂取量が多い
- 肥満とメタボリックシンドロームの増加
の2点です。
生活習慣では
- 濃い味付けのものを食べ過ぎている
- 外食が多い
- お腹いっぱいになるまで食べる
- 野菜・果物をあまり食べない
- 運動をあまりしない
- 太っている
- タバコを吸う
- ストレスを感じやすい
- 不規則な生活をしている
- 慢性的な寝不足である
などがあげられます。
高血圧のリスク
高血圧(収縮期血圧)は2013年、男女ともに世界で最も多い死亡リスクとなっています。
日本においても高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人と推定され、喫煙に次いで多くなっています。
高血圧の状態が長く続くと、それだけ血管や心臓に負担がかかり、血管の傷みも進みます。
脳や血管、心臓関連の病気を引き起こすリスクが高まります。
高血圧が続くことにより腎臓機能が低下し、また、腎臓の機能が悪くなると高血圧をまねく、という悪循環にも陥ります。
高血圧症の患者は、血圧値が高くなるほど、
などの診断を受ける人が多くなる傾向がみられます。
といった大きな病気を引き起こす恐れもあります。
心血管病死亡の約50%、脳卒中罹患の50%以上が、至適血圧を超える血圧高値に起因するものと推定されています。
脳卒中
(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)
高血圧によって最もリスクが高くなるのが、脳卒中です。
収縮期血圧(最高血圧)が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが男性で約20%、女性で約15%高くなります。
脳卒中は命が助かっても、運動障害や言語障害が残りやすく、長期のリハビリが必要となることも少なくありません。
心疾患
(心筋梗塞、狭心症など)
高血圧は、心疾患のリスクも高めます。
特に、男性の場合は影響が大きく、収縮期血圧が10mmHg高くなると、心筋梗塞や狭心症の危険度が約15%も増加します。
慢性腎臓病
血圧が高いと腎臓にも大きな負担がかかり、血液中のナトリウムなどの排泄がうまくいかず、さらに血圧が上昇する悪循環を起こしやすくなります。
慢性腎臓病を起こすと、脳卒中や心筋梗塞による死亡率も高くなることがわかっています。
血圧を測定する
高血圧はほとんど自覚症状がないため、血圧計で測定しなければ分かりません。
しかしながら、病院に行かなくても、家庭で血圧計で測って判断できる、自覚しやすい病気ともいえます。
診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧が優先されます。
高血圧(収縮期血圧)は2013年、男女ともに世界で最も多い死亡リスクとなっています。
日本においても高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人と推定され、喫煙に次いで多くなっています。
血圧を測定することで、高血圧が改善しているかの効果検証ができると同時に、死亡リスクを減らせているかもわかるのです。
家庭での血圧測定のタイミング
血圧は、日中だけでなく24時間の中で時々刻々と変化しています。
日本高血圧学会は、「起床時」と「就寝前(寝る前)」の毎日決まった時間帯に測定することを推奨しています。
起床後は、起きて1時間以内、トイレをすませ、服薬・食事前に測定します。
就寝前は、入浴後1時間以上時間をあけて測定しましょう。
起床時の測定
- 起床後1時間以内
- 排尿後
- 朝食前
- 服薬前(降圧剤を飲んでいる場合)
- 1~2分安静にしてから
就寝前の測定
正しい血圧測定の方法
リラックスして測る
血圧は、精神状態の影響を受けます。
イライラしていたり、緊張していたりしていると、血圧が上がりやすくなり、正確な血圧値を知ることはできません。
血圧を測る前に、1~2分のリラックスする安静時間を設けましょう。
楽な姿勢で座り、5~6回深呼吸をすることもおすすめです。
毎日、同じ時間帯に測りましょう
血圧測定は、長期的な血圧の変動を、正しく測定できてこそ意味があります。
一日のうちで最も安定した状態が保てる時間帯を選んで、毎日できるだけ同じ時刻に測定しましょう。
座った姿勢で、カフ(腕帯)を正しく巻く
正確な血圧を測定するためには、正しい姿勢を保ち、正しくカフを装着することが大切です。
正しい姿勢
- 椅子の背もたれに軽くもたれる
- 足は組まない
- リラックスして座る
- 姿勢を保つ
正しくカフを装着する
- 測定部位(上腕や手首)が心臓の高さ(乳頭の位置)になる
※机が低い場合は本やクッションなどで調整する
- カフは、巻き終わった時に、すき間ができないようにぴったりと巻く
排尿、排便はすませましょう
排尿、排便をすませて数分経ってから、または、尿意・便意のないときに測定しましょう。
寒すぎたり熱すぎたりしない部屋で測る
室温20℃前後に保った部屋で測定しましょう。
高血圧の判断の基準値
日本高血圧学会によるガイドラインでは、高血圧とされる血圧値は、
- 収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上
- 拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上
のどちらか一方だけでも該当すれば、高血圧となります。
成人における血圧値の分類(mmHg)
分類 |
収縮期血圧 (最高血圧) |
|
拡張期血圧 (最低血圧) |
至適血圧 |
<120 |
かつ |
<80 |
正常血圧 |
120~129 |
かつ または |
80~84 |
正常高値血圧 |
130~139 |
かつ または |
85~89 |
I度高血圧 |
140~159 |
かつ または |
90~99 |
II度高血圧 |
160~179 |
かつ または |
100~109 |
III度高血圧 |
≧180 |
かつ または |
≧110 |
(孤立性) 収縮期高血圧 |
≧140 |
かつ |
<90 |
日本高血圧学会によるガイドラインでは、高血圧の人、または正常高値血圧の人も、
- 収縮期血圧(最高血圧)130mmHg未満
- 拡張期血圧(最低血圧)80mmHg未満
となるように目標としています。
診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧が優先されます。
家庭血圧の高血圧基準は、診察室血圧よりも低くなっています。
異なる測定法における高血圧基準(mmHg)
分類 |
収縮期血圧 (最高血圧) |
|
拡張期血圧 (最低血圧) |
診察室血圧 |
≧140 |
かつ または |
≧90 |
家庭血圧 |
≧135 |
かつ または |
≧85 |
自由行動下 血圧 |
|
|
|
24時間 |
≧130 |
かつ または |
≧80 |
昼間 |
≧135 |
かつ または |
≧85 |
夜間 |
≧120 |
かつ または |
≧70 |
1日の中で血圧は変動しますので、同じ時間帯に測るようにしましょう。
生活習慣を改善する
血圧は生活習慣の影響を受けるため、高血圧治療の基本は、生活習慣の改善です。
普段から、
- 減塩
- 肥満の解消(適正体重の維持)
- 運動
- 節酒
などを心掛け、生活習慣を是正することで、血圧が低下するといわれています。
生活習慣を見直しても十分に血圧が下がらない場合には、薬による治療(降圧薬等)が開始されます。
血圧は急に下げるのではなく、少しずつ下げていきましょう。
生活習慣の見直しも、自分に出来ることから焦らず取り組んでいき、毎日続けていくことが大切です。
生活習慣を見直す
- 規則正しい生活をする
- 適度な運動を続ける
- ストレスをなくす
- 便秘にならないように気を付ける
- 急激な温度差に注意する
- 禁煙する
- 定期的に血圧測定をする
避けるべき生活習慣
食塩の過剰摂取
日本においてかつて、高血圧が多く、脳卒中が多発した理由の一つとして、食塩の過剰摂取があげられています。
食塩摂取量と血圧上昇との間に関連があることはよく知られています。
- 減塩によって将来の血圧上昇が抑制される
- 食塩摂取過多の患者では24時間を通して血圧が高い
との報告があります。
食塩と血圧上昇
食塩(塩化ナトリウム)をとり過ぎると、血液中にナトリウムがたまります。
ナトリウムがたまると、水分を蓄えてナトリウム濃度を調節しようとする働きにより、循環血流量が増加して、血圧が上がります。
食塩摂取の目標量
2011年の国民健康・栄養調査結果では、国民1人1日あたりの食塩摂取量は平均10.4g(男性11.4g、女性9.4g)でした。
日本人の食事摂取基準(2010年版)では、成人において今後5年間に達成したい1日の食塩摂取の目標量として、男性9.0g未満、女性7.5g未満を設定しています。
2012年策定の健康日本21(第2次)では、2022年までに国民の平均食塩摂取量を8.0gにすることを目標にしました。
2012年に発表された世界保健機関(WHO)のNa摂取量に関するガイドラインでは、一般成人の食塩摂取量を5g/日未満にすべきとしています。
目標食塩摂取量(g/日 未満)
食塩摂取量 |
男性 |
女性 |
食事摂取基準 |
9.0 |
7.5 |
健康日本21 |
8.0 |
8.0 |
WHO |
5.0 |
5.0 |
食塩を減らす!
食塩のとり過ぎは、血圧を上げる大きな要因です。
を工夫し、減塩を心がけましょう。
加工食品に含まれる食塩も合わせて一日に5g未満を目標にしましょう。
食品の選び方
加工品や塩蔵品を避けて、生の食品を選びましょう。
調理の工夫
煮物や汁物などは、天然のだしをきかせましょう。薄味でもおいしく食べることができます。
酸味、香辛料、香味野菜を使うことで、香りや風味を生かしましょう。
献立
- 主食は、できるだけ米にしましょう
- パン・めんは、食塩が含まれるので注意しましょう
- 汁物(みそ汁・すまし汁・スープなど)はできるだけ食塩を減らしてましょう
- めん類は、つゆを全部飲むと5g以上の食塩量です。つゆは残すようにしましょう
- 漬物・佃煮類は、少量でも食塩量が多いのでなるべく控えましょう
- 食卓で使う調味料は、できるだけ控えましょう
- 外食やそうざいは食塩を多く含むものが多いので、成分表示を確認して、食塩が多いものは避けましょう
野菜・果物の不足
野菜や果物に豊富なカリウムは、細胞外液に多いナトリウムと相互に作用しながら、細胞の浸透圧を維持したり、水分を保持したりするのに重要な役割を果たしています。
またカリウムは、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。
カリウムは野菜や果物、コンブやヒジキなどの海藻などに多く含まれていますので、カリウムが不足しないように、積極的に食べましょう。
血圧を下げるのに効果的と言われている食品は、
- ブロッコリー
- ニンジン
- 大豆食品
- レーズン
- リンゴ
です。
魚(魚油)をあまり食べない
青魚に含まれる油(オメガ3脂肪酸)のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、血小板凝集抑制作用があり、血液をサラサラにして流れやすくし、血圧を下げる効果があります。
脂肪・油のとり過ぎ
オメガ6脂肪酸は、オメガ3脂肪酸とは逆の血液を凝固させたり、体内の炎症を促進したりする働きがあります。
オメガ6脂肪酸の含有量の多い油(大豆油、ごま油、コーン油、ひまわり油、綿実油、サンフラワー油など)は摂りすぎないようにしましょう。
動物性の脂に多く含まれる飽和脂肪酸は、血圧が高い人は特に摂取し過ぎないことがすすめられています。
飽和脂肪を多く含む食品には、牛肉、豚肉、鶏肉の皮の部分、バター、チーズ、アイスクリームなど乳製品があります。
食べ過ぎ
食べ過ぎは、肥満や塩分のとり過ぎにつながるので、腹八分目にとどめるようにしましょう。
運動不足
運動不足はそれ自体が高血圧の原因となるほか、運動不足による肥満が高血圧のリスクを高めます。
肥満
肥満は高血圧の大きな危険因子であることが明らかになっています。
特に、内臓脂肪型肥満は血圧上昇と関連が深く、減量すると血圧が下がるという報告があります。
また、心臓から送られる血液の量は体重に比例して増加するため、肥満は心臓にも負担がかかります。
また、肥満の人では睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが高く、SASは睡眠中の血圧上昇(スリープサージ)や昼間の血圧上昇、夜間高血圧をもたらします。
ストレス
ストレスは血圧を一時的に上昇させます。
ストレスが繰り返されると、交感神経の緊張状態が続いて血管は収縮し、血圧は高い状態を持続するようになります。
睡眠不足
睡眠中は交感神経の活動が低下し、血圧は低くなります。
しかし、睡眠不足になると交感神経が活性化したままで夜間の血圧が低下しないだけでなく、朝や昼間の高血圧のリスクが高くなります。
飲酒
飲酒すると末梢血管が拡張するため一過性(数時間持続)に血圧が低くなりますが、飲酒習慣は血圧上昇の原因となります。
また、飲酒により早朝の血圧上昇のリスクが高まることがわかっています。
過度の飲酒は血圧を上昇させます。
寒冷
寒い季節には起床前の血圧が低下するため、起床時の血圧上昇(モーニングサージ)が大きくなります。
喫煙
喫煙習慣が高血圧の要因かどうかはまだ明確になっていませんが、喫煙により末梢血管が収縮し、一時的に血圧が上昇します(1本のタバコで15分程度)。
喫煙は血圧を上げる作用があります。さらに動脈硬化も進行させるので、狭心症や心筋梗塞のリスクも高まります。
血圧を下げるための生活の心掛け
食事
- 濃い味付けのものを減らす
- 野菜や果物をたっぷり食べる
- 魚介類を食べる
- 動物性脂肪・油(オメガ6)を減らす
- 加工食品をひかえる
- 間食を控える
- 腹八分目にする
- お酒の量を減らす・禁酒をする
- 太らないよう心掛ける
- 食品表示の塩分量をチェックする
身体活動・過ごし方
- 規則正しい生活をする
- 睡眠時間を十分に取る
- 体を積極的に動かす
- リラックスする時間をつくる
- 部屋の温度差に気を付ける
- 禁煙をする
- 定期的に血圧測定をする