高血圧は、世界で死亡した最大の個人的リスクで、2013年に世界中で1040万人が死亡しました。
高血圧が原因で死亡した人は、死亡した全体の5人に1人にもおよぶ割合です。
高血圧が死亡率に与える影響は、1990年から2013年の間に男性で約59%、女性で約40%増加しました。
死亡者数に関連するリスク
2013年、男女ともに世界で最も多い死亡者数に関連するリスクのランキングです。
世界で最も多い死亡リスク
- 高血圧(収縮期血圧)
- 喫煙
- 肥満(高BMI)
- 糖尿病(空腹時高血糖)
- 塩分のとり過ぎ(食事)
- 野菜・果物の不足(食事)
- 大気汚染(微小粒子の拡散)
- 固形燃料による家庭内空気汚染
- 高コレステロール
- 飲酒
リスクは男性と女性で大きく異なります。
2013年、男性の世界で最も多い死亡者数に関連するリスクのランキングです。
男性の最も多い死亡リスク
- 高血圧(収縮期血圧)
- 喫煙
- 肥満(高BMI)
- 塩分のとり過ぎ(食事)
- 糖尿病(空腹時高血糖)
- 飲酒
- 野菜・果物の不足(食事)
- 大気汚染(微小粒子の拡散)
- 固形燃料による家庭内空気汚染
- 高コレステロール
2013年、女性の世界で最も多い死亡者数に関連するリスクのランキングです。
女性の最も多い死亡リスク
- 高血圧(収縮期血圧)
- 肥満(高BMI)
- 糖尿病(空腹時高血糖)
- 塩分のとり過ぎ(食事)
- 野菜・果物の不足(食事)
- 喫煙
- 高コレステロール
- 固形燃料による家庭内空気汚染
- 大気汚染(微小粒子の拡散)
- 腎臓病
男性と女性で異なるリスク
喫煙は男性にとってより大きな問題であり、第2のリスクとしてランク付けされ、440万人の死亡に関連しています。
女性の場合は6番で、140万人が死亡しています。
飲酒(アルコールの使用)は男性の死亡のトップ10の危険因子ですが、女性の主な原因ではありませんでした。
ワシントン大学の独立した世界的な健康研究機関である健康測定評価研究所(IHME)による、2013年の分析結果です。
IHMEは、1990年から2013年まで188カ国における世界的な調査、世界疾病比較リスク評価をしています。
日本人の高血圧は3人に1人
「NIPPON DATA 2010」などの調査によると、高血圧有病率から試算した、日本の高血圧有病者数は4,300万人(男性2,300万人、女性2,000万人)に上ります。
このうち、治療を受けている人は57%(2,450万人)。
さらに、治療を受けている患者のうち、血圧が基準である140/90mmHg未満にコントロールされているのは50%(1,200万人)です。
その結果、高血圧は脳卒中、心筋梗塞、心不全などの循環器疾患による死亡の最大の原因になっています。
また、高血圧があると脳卒中のリスクも高まり、その後遺症とともに要介護の大きな原因になっています。
高血圧があると、腎臓病や認知症にもなりやすくなります。
高血圧が国民医療費も増加にも関連しています。
日本高血圧学会による新ガイドライン
日本高血圧学会は、5年ぶりに改訂となる「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を発表しました。
新しいガイドラインで示された「高血圧の基準値」は、従来通り、診察室血圧が140/90mmHg、家庭血圧が135/85mmHgで、変更していません。
しかし、高血圧と診断された人が、生活習慣の改善や薬を飲むことでめざす「降圧目標」が厳しくなりました。
降圧目標が引き下げ
降圧目標の基準値が10mmHg引き下げられました。
75歳未満の成人
以前は、診察室血圧140/90mmHg未満をめざすとされていました。新基準値は130/80mmHg未満に変更されました。
家庭血圧の目標は125/75mmHg未満となりました。
75歳以上の高齢者(診察室血圧)
以前は、150/90mmHg未満(様子を見ながら下げられれば140/90mmHg未満)をめざすとされていました。
新基準値は140/90mmHg未満(併存疾患などによって降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満)に変更されました。
高血圧に該当していない正常高値血圧(120~129/80mmHg)でも、血圧を下げるための生活習慣の修正が必要ということです。
血圧値の分類
高血圧は、血圧値が
- 収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上
- 拡張期血圧(最低血圧)が90mmHg以上
のどちらか一方でも該当すると高血圧です。
成人における血圧値の分類(mmHg)
分類 |
収縮期血圧 (最高血圧) |
|
拡張期血圧 (最低血圧) |
至適血圧 |
<120 |
かつ |
<80 |
正常血圧 |
120~129 |
かつ または |
80~84 |
正常高値血圧 |
130~139 |
かつ または |
85~89 |
I度高血圧 |
140~159 |
かつ または |
90~99 |
II度高血圧 |
160~179 |
かつ または |
100~109 |
III度高血圧 |
≧180 |
かつ または |
≧110 |
(孤立性) 収縮期高血圧 |
≧140 |
かつ |
<90 |
診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧が優先されます。
家庭血圧の高血圧基準は、診察室血圧よりも低くなっています。
異なる測定法における高血圧基準(mmHg)
分類 |
収縮期血圧 (最高血圧) |
|
拡張期血圧 (最低血圧) |
診察室血圧 |
≧140 |
かつ または |
≧90 |
家庭血圧 |
≧135 |
かつ または |
≧85 |
自由行動下 血圧 |
|
|
|
24時間 |
≧130 |
かつ または |
≧80 |
昼間 |
≧135 |
かつ または |
≧85 |
夜間 |
≧120 |
かつ または |
≧70 |
1日の中で血圧は変動しますので、同じ時間帯に測るようにしましょう。
社会全体で高血圧を減らす
高血圧に個人の生活習慣が大きく影響していて、また生活習慣は社会的背景に大きく影響されます。
厚生労働大臣が2012年に告示した「健康日本21(第二次)」では、2022年までの10年間に、国民の収縮期血圧の平均値を4mmHg低下させることが目標に掲げられています。
男性 138mmHg → 134mmHg
女性 133mmHg → 129mmHg
日本人の高血圧の特徴として挙げられたのが、
- 食塩摂取量が多い
- 肥満とメタボリックシンドロームの増加
の2点です。
特に日本人の食生活で大きな特徴となっているのが、食塩の摂取量が多いこと。
減塩対策により心疾患死亡が約40%減少
イギリスでは、政府が主導し食品業者が商品の塩分制限の自主的な目標を設定し、食品の塩分量を徐々に提言しました。
結果、成人の1日あたりの食塩摂取量は2006年には9.5gだっが、2011年には8.4gになり、15%の減塩に成功しました。
これに合わせて、2003年から2011年の間に、脳卒中・心臓病による死亡が約40%減少したといいます。