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とるべき油:オメガ3脂肪酸の健康効果

オメガ3脂肪酸(ω-3脂肪酸)が、体の健康に重要な役割を果たしていることが、研究から次々と明らかになっています。

オメガ3脂肪酸は、体で作ることができない、食品から摂取する必要がある「必須脂肪酸」と呼ばれる栄養素です。

オメガ3脂肪酸には、「魚を食べると頭が良くなる」と有名になったマグロに含まれるDHAや、DHAと共に青魚に多く含まれるEPAがあります。

植物油では、オメガ3脂肪酸であるαリノレン酸が植物油に含まれています。

αリノレン酸を多く含む植物油は、えごま油とアマニ(亜麻仁)油(フラックスシードオイル)、麻実油 (ヘンプシードオイル)、菜種油(キャノーラ油)、大豆油です。

中でも、オメガ6脂肪酸よりオメガ3脂肪酸が多く含まれる植物油が、えごま油とアマニ油です。

オメガ3脂肪酸の効果

オメガ3脂肪酸は、研究によると、炎症を抑えるのに役立つ活性代謝物であるレゾルビンの働きにより、心臓、脳、腸、関節に多数の効果があると考えられています。

  • ADHD(注意欠陥・多動性障害)
  • 不安障害(神経症)
  • 関節炎
  • 喘息
  • うつ病
  • 腸の健康
  • 心臓疾患
  • 中性脂肪(高トリグリセリド)
  • 偏頭痛
  • 乾癬
  • 関節リウマチ
  • 外傷性脳損傷

今、日本人がとるべき油

私たちの身の回りには、様々な種類の油がありますが、その中で今、日本人が一番とるべき油があります。

それが魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる油です。

4つの油の種類

オリーブオイルや、ごま油、大豆油、なたね油など、私たちの身の回りにある油・脂肪は、大きく4つのグループに分けることができます。

そもそも油は、さまざまな種類の「脂肪酸」が混ざっていて、どの種類の脂肪酸の割合が多いかで分けられます。

  • 飽和脂肪酸
    (バターや牛肉など)
  • オメガ9脂肪酸
    (オリーブオイルなど)
  • オメガ6脂肪酸
    (大豆油やコーン油など)
  • オメガ3脂肪酸
    (魚の油やえごま油など)

オメガ3が不足している影響

オメガ3脂肪酸は、体で作ることができない、食品から摂取する必要がある栄養素です。

ところが、現在の日本人の油の摂取比率を見てみると、オメガ3脂肪酸だけが極端に少なくなっています。

近年、このバランスの悪さが、心筋梗塞などの心疾患のリスクを高めることが分かってきたため、オメガ3脂肪酸を積極的にとることが勧められています。

かつて日本人は魚からオメガ3脂肪酸を十分にとっていました。

しかし近年は、食の欧米化もあって魚を食べる量が減少。

日本人の魚離れが進み、2006年に日本人の1日あたりの肉類の摂取量が、魚介類の摂取量を上回りました。

どの年代でも年々、肉類の摂取量が増加して、魚介類の摂取量が減少しています。

オメガ3脂肪酸の不足が、心筋梗塞などの病気のリスクにつながることが、様々な研究から分かってきています。

代表的なオメガ3脂肪酸

α-リノレン酸

α-リノレン酸(ALA)は、必須脂肪酸(体内で合成できないため摂取する必要がある)で、主に

  • 亜麻仁(フラックスシード)
  • えごま
  • クルミ
  • 大豆
  • チアシード
  • バジルシード
  • 麻の実(ヘンプシード)
  • スピルリナ

に含まれています。

体内に入ったα-リノレン酸の一部10%~15%程は、EPAやDHAに変換されます。

EPA

EPA(エイコサペンタエン酸 または イコサペンタエン酸)は、フィッシュオイル(魚油)、クリルオイル(オキアミ油)、(EPAで飼育された鶏の)卵に含まれます。

高度不飽和脂肪酸(PUFA)とも呼ばれています。α-リノレン酸を原料として体内で生合成します。

DHA

DHA(ドコサヘキサエン酸)は、EPA同様にフィッシュオイル(魚油)に多く含まれます。

しかしDHAは人間の脳内にもっとも豊富に存在する長鎖不飽和脂肪酸で、EPAは脳内にほとんど存在しません。

人間の体内において、脳、皮膚、目の大事な要素です。

高度不飽和脂肪酸(PUFA)とも呼ばれています。α-リノレン酸を原料として体内で生合成します。

オメガ3脂肪酸による効果

オメガ3脂肪酸とADHD

  • 不注意(集中力がない・気が散りやすい)
  • 過活動(じっとしていられない・落ち着きがない)
  • 衝動性(順番を待てない・考える前に実行してしまう)

などの注意欠陥・多動性障害すなわちADHDは、あらゆる年代が直面する一般的な疾患です。

ADHDが、子供たちの学習に影響を及ぼし、自信に悪影響となることもあります。

大人も、職場や個人的な人間関係で、問題を引き起こすことがあるこの疾患に、多くの人が苦しんでいます。

処方薬があるとはいえ、副作用がないわけではありません。

2016年の研究では、ADHD症状のある患者の治療にオメガ3脂肪酸が有益である可能性が示されました。

他の研究でも、同様に効果がある可能性を示しています。

オメガ3脂肪酸と不安障害(神経症)

不安障害のある人は世界中で数百万人にも及びます。

処方薬が使用されることが多く、中には習慣性のものもあることから、他の選択肢を探す人も少なくありません。

2018年に11カ国から2240人が参加したJAMAのメタアナリシスは、オメガ3脂肪酸が臨床不安症状の軽減に役立つ可能性があると結論しました。

他の研究でも同様の結果が出ています。

オメガ3脂肪酸と関節炎

加齢とともに、関節が変形性関節症を患うと、朝のこわばりや動作困難を引き起こすことがあります。

動くことで痛みがおさまるケースが多いとはいえ、体内の炎症を抑えることが不可欠です。

このような場合、オメガ3脂肪酸の魚油(EPA / DHA)による効果が期待できます。

魚油を毎日摂取すると、関節硬直が軽減するという研究結果があります。

オメガ3脂肪酸と喘息

喘息は、肺組織を取り囲む筋肉が収縮する際に起こる可逆的な炎症性肺疾患です。

世界中で3億人が罹患する疾患で、年間およそ25万人が喘息の合併症で死亡しています。

喘息は、ゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴をはじめ、咳や息切れなどの症状を引き起こすことがあります。

科学者らは、喘息患者の血中の炎症性タンパク質(IL-17AおよびTNF-α)の増加を測定しています。

3カ月間、毎日180mgのEPA、120mgのDHAを摂取すると、軽~中等度の喘息のある子供たちの炎症性タンパク質濃度が減少したことが示されています。

さらに、臨床的肺機能検査では、患者の72%に改善が見られました。

2017年の研究では、妊娠中の女性が魚油のサプリメントを摂取すると、出生後の子供の喘息症状の軽減に役立つ可能性があることが示唆されました。

Pediatric Allergy and Immunology(2018)の研究結果では、

  • 乳児期(6〜9カ月)に魚を取り入れ、その後は定期的(少なくとも週1回)に魚を摂取すると、最大4歳半までの子供の喘息と喘鳴が軽減される
  • 年長の子供たちには脂肪の多い魚の摂取が有益であると考えられる

としています。

Nutrition Research Reviews(2016)の研究では、「オメガ3を含むフィッシュオイル(魚油)の補給が喘息患者に有益と考えられる」との結果です。

Cytokine(2016)の研究では、「オメガ3が喘息管理の有望な補完的方法である」との結論が出ています。

オメガ3脂肪酸とうつ病

うつ病は多数の人が悩む一般的な疾患です。

その原因は多岐に及び、処方薬が有効な場合もありますが、各患者に最も効くものに出会うまでに、様々な薬を試行錯誤することが多いものです。

代替方法を求める人が多い中、一つの方法として必須脂肪酸を摂取する方法があります。

2001年の研究では、EPA(必須脂肪酸)が重度のうつ病に役立つ可能性があることが示されました。

Integrative Medicine Researchによる2015年の研究では、うつ病治療におけるオメガ3を含むフィッシュオイル(魚油)の使用を支持しています。

一方、うつ症状や不安を感じる38人の子供を対象とした2017年の研究では、オメガ3脂肪酸を投与すると、主にうつ症状のある子供たちの改善が実証されました。

なお、同研究で不安症状には有意な改善は見られませんでした。

成人を対象とした2017年の研究では、オメガ3脂肪酸がうつ病患者に有益であることを証明するのに十分な証拠がないことが分かりました。

なお、有害性の証拠はありませんでした。さらに評価するには、今後も研究が必要です。

オメガ3脂肪酸と腸の健康

健康な腸は、健康全般にとってとても重要です。

脳と腸の双方向的な関連「脳腸相関(脳腸軸)」は、認知と全身の健康に大きな役割を果たすことが分かっています。

International Journal of Molecular Sciencesの2017年の研究によると、オメガ3脂肪酸は腸内細菌叢のバランス維持を助けるのに重要な役割を担い、プレバイオティクス効果があると考えられています。

2016年の動物研究でも、健康な腸内細菌のバランスを崩す原因となり得る抗生物質誘発性の変化に対し、オメガ3脂肪酸が腸を保護することが示されました。

オメガ3脂肪酸と心臓疾患

心臓疾患は、全世界の主な死因の一つです。

現代医学は、心臓疾患による合併症の減少を目指し、高血圧、コレステロール、糖尿病などの危険因子を減らすことを重視しています。

オメガ3脂肪酸もその一端を担うことが考えられます。

Annals of Internal Medicineの2013年の研究は、心臓疾患、脳卒中、鬱血性心不全の既往歴のない69〜79歳のアメリカ人男性2692人を対象に実施されました。

これらの男性は、1992年に血中脂肪酸値が測定され、2008年まで観察が続けられました。

その結果、高い値のEPAとDHAがある被験者は、死亡確率が17%および23%低いことが示されました。

「高いオメガ3脂肪酸の血中脂肪酸値は、血管疾患による死亡リスクの低さと関連している」
という結論が出ました。

心臓発作を起こしたことのある個人を対象とした2012年の研究では、オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)を摂取した人は、心臓突然死で死亡する確率が45%低く、心血管疾患が20%減少し、何らかの原因による死亡リスクも15%低かったことが分かりました。

オメガ3脂肪酸と中性脂肪

中性脂肪の1つであるトリグリセリドの値が高いことは、心臓疾患の危険因子として知られています。

そのため、トリグリセリド(中性脂肪)値を下げることは不可欠です。

必須脂肪酸を摂取することに加え、トリグリセリド(中性脂肪)値の低下促進に食事療法は欠かせません。

Lipids in Health and Disease の2016年の研究は、オメガ3脂肪酸がトリグリセリド(中性脂肪)値を下げるのに役立つことを発表しました。

さらに、1378人を対象に2017年に行われたAtherosclerosisのメタアナリシス研究では、脂肪の多い魚を摂取すると、心血管疾患の2つの重要なバイオマーカーであるHDL(善玉コレステロール)値を高めつつ、トリグリセリド(中性脂肪)低下を促進することが示されました。

オメガ3脂肪酸と偏頭痛

偏頭痛は、生活に支障をきたすこともある消耗性頭痛です。

欠勤の主な原因でもある偏頭痛対策の鍵は予防です。

2017年の研究では、おそらく脳内の炎症を抑えることで、オメガ3脂肪酸が偏頭痛に悩む人の治療に役立つ可能性があることが示されました。

オメガ3脂肪酸と乾癬

乾癬(かんせん)は、一般的に皮膚の乾燥した隆起斑が見られる慢性炎症性皮膚疾患で、かなり辛い症状もあります。

処方薬が効果的なこともありますが、時には重篤な副作用を伴う場合もあります。

そのため、自然療法が求められることが多いものです。

乳製品や小麦のように再発を引き起こしがちな食品を避けることに加えて、オメガ3脂肪酸の需要が高まってきました。

Scientific Reportsの2018年の研究では、オメガ3代謝産物のレゾルビンE1が、乾癬患者への効果が期待できるオメガ3脂肪酸のメカニズム解明の鍵である可能性が示されました。

Journal of the American Academy of Dermatologyの2015年の研究では、15件の研究が評価され、そのうち12件でオメガ3脂肪酸の有益性が示され、3件では示されませんでした。

この研究に基づき、乾癬患者がオメガ3脂肪酸を摂取することで改善する可能性があると言えそうです。

ビタミンDと併用すると、より改善が見られたとの指摘もあります。

オメガ3脂肪酸の推奨摂取量は、EPA/DHAを合わせて1日2000〜10000mgです。

オメガ3脂肪酸と関節リウマチ

関節リウマチは、関節が炎症を起こし、免疫系が軟骨、さらには骨までも攻撃し、関節炎の激痛を引き起こすこともある自己免疫疾患です。

処方薬を服用すると3人に1人は改善が見られるようですが、長期的な副作用に不安があることから、多くの患者は、なるべく自然な方法での症状緩和を模索しています。

その治療法の一つとして、オメガ3脂肪酸が役立ちます。

2010年の研究で、関節リウマチ患者の痛みと関節の腫れの緩和促進にオメガ3フィッシュオイルの有効性が実証されました。

Global Journal of Health Scienceの2016年の研究は、関節リウマチの治療にDMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)を服用中の患者60人を評価しました。

プラセボ錠剤と比較して、オメガ3脂肪酸を摂取した被験者らの症状に顕著な改善、運動性の向上、痛みの軽減が見られました。

Annals of Rheumatic Diseasesの2015年の研究でも、従来の関節リウマチ治療を受けていた患者の食事療法に、フィッシュオイルを加えたところ改善が示されました。

2019年の研究では、魚やフィッシュオイルを多く摂取しても、関節リウマチの発症を予防したという証拠は示されていません。

現時点で、フィッシュオイルの主な効能は、既に診断された後の治療において発揮されるようです。

オメガ3脂肪酸と外傷性脳損傷

外傷性脳損傷(TBI)は、過去10年でよく理解されるようになりました。

プロのフットボール選手らが起こした多数の脳震盪を原因とする合併症によって表面化したものです。

脳が外傷を受けると炎症が生じることは科学的に認識されています。

これが、酸化的損傷および興奮性アミノ酸の増加につながります。

American Journal of Emergency Medicineの2012年の研究では、オメガ3脂肪酸の早期投与が、一部の炎症の緩和に役立つ可能性があり、より良い結果をもたらすことが示唆されています。

Journal of The American College of Nutritionの2016年の研究は、オメガ3脂肪酸の全般的な安全性プロフィールを考察し、外傷性脳損傷の第一選択治療とみなすべきであると提案しています。

これは運動選手や、事故に遭った人を対象に考慮できるでしょう。

オメガ3脂肪酸による副作用・出血リスク

オメガ3が過多になった場合は、血がサラサラになりすぎて、出血が止まらなくる出血傾向が起きることがあります。

一般に、医師は手術を控えた患者にフィッシュオイル(魚油)の摂取を中止するよう推奨しています。

52件の他の研究を調べた2017年の研究によると、フィッシュオイル(魚油)サプリメントに起因すると考えられる手術中・後の出血リスク増加は確認されていません。

オメガ3脂肪酸の推奨用量

フィッシュオイル(魚油)の摂取

日本人の食事摂取基準(2010年版)では、フィッシュオイル(EPA・DHA)について、1日に合計で1000mg以上の摂取が望ましいとされています。

魚を常食しない人にとって、フィッシュオイル(魚油)サプリメントの摂取は、オメガ3を摂る方法の一つです。

オメガ3脂肪酸をサプリメントで摂取する場合は、通常1日500〜4000mgのフィッシュオイル(魚油)を摂取します。

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランス

必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、体内で対抗するように働きます。

オメガ6脂肪酸は、血液を凝固させたり、体内の炎症を促進したりする働きがあり、オメガ3脂肪酸は、血液を固まりにくくしたり、炎症を抑えたりする働きがあります。

この2つの脂肪酸のバランスが崩れて、一方が過剰になると、血が固まりやすくなって心筋梗塞などのリスクが高まったり、逆に血がサラサラになりすぎて、出血が止まらなくなったりします。

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の望ましい摂取比率は、1:1~4であると報告されています。

日本脂質栄養学会が推奨している、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は1:2です。

オメガ3脂肪酸が含まれている植物油

植物油には、オメガ6脂肪酸のリノール酸が豊富に含まれているものの、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸はあまり含まれていないものがほとんどです。

穀物類には、リノール酸が豊富に含まれているものの、α-リノレン酸はほとんど含まれていません。

α-リノレン酸がある程度、含まれている植物油はこれです。

  • エゴマ油
  • アマニ油(フラックスシードオイル)
  • 麻実油 (ヘンプシードオイル)
  • 菜種油(キャノーラ油)
  • 大豆油

そして、リノール酸よりもα-リノレン酸の含有量が多い、オメガ6脂肪酸よりもオメガ3脂肪酸が多いのは、エゴマ油とアマニ油(フラックスシードオイル)です。

α-リノレン酸は取り扱いに注意

α-リノレン酸は、光と熱に弱く酸化されやすいという特徴があります。

そのため揚げ物や炒め物など、加熱調理には適していません。

サラダやマリネ、カルパッチョなど、油をそのまま生で使う料理や、冷奴や湯豆腐、納豆、ヨーグルトなどにそのままプラスするなどの使い方で、摂ることができます。

α-リノレン酸を含む油で加熱調理をした場合には、オメガ3としての効果は期待できませんので、注意してください。

保管は開封前は冷暗所、開封後は冷蔵庫で保管しましょう。

空気に触れると酸化してしまうので、開封したら1か月をめやすに早めに使い切ることをおすすめします。

男性においては前立腺がんの罹患リスクのため、α-リノレン酸の過剰摂取は注意が必要とされています。

なお、前立腺がんの罹患リスクは、特に乳製品や肉類由来のα-リノレン酸との関連が示唆されています。

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