料理に使う油や、肉やバターに含まれている脂(あぶら)は、体の健康に良いのか?悪いのか?
油・脂のグループ
オリーブオイルや、ごま油、大豆油、なたね油など、私たちの身の回りにある油、肉や魚に含まれる脂は、大きく4つのグループに分けることができます。
そもそも油は、さまざまな種類の「脂肪酸」が混ざっていて、どの種類の脂肪酸の割合が多いかで分けられます。
- 飽和脂肪酸
(バターや牛肉など)
- オメガ9脂肪酸
(オリーブオイルなど)
- オメガ6脂肪酸
(大豆油やコーン油など)
- オメガ3脂肪酸
(魚の油やえごま油など)
摂りたい油、避けたい油
必須脂肪酸と呼ばれる、体内で合成できないために摂取する必要がある脂肪酸が「オメガ6脂肪酸」と「オメガ3脂肪酸」です。
今、日本人はオメガ6脂肪酸を摂りすぎていて、オメガ3脂肪酸が足りてないと言われますので、オメガ3脂肪酸を摂る必要があります。
また「トランス脂肪酸」は摂ることによる悪影響が報告されていて、使用を規制する国が増えています。
トランス脂肪酸を摂らないようにしましょう。
不健康な食事(poor diet)
国際医学誌「ランセット(The Lancet)」に発表されたワシントン大学による研究で、「不健康な食事(poor diet)」により、世界で年間に1,100万人が死亡しているという調査結果が発表されました。
約40ヵ国の130人以上の研究者が参加して、1990年から2017年までの195カ国におけるデータを分析した、大規模な研究です。
調査結果から、「不健康な食事(poor diet)」を避けるために摂取したい油(脂肪)は多価不飽和脂肪酸、避けたい油(脂肪)はトランス脂肪酸です。
魚介類(オメガ3脂肪酸)
魚介類(オメガ3脂肪酸)のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は1日に250mgを摂取するように推奨しています。
多価不飽和脂肪酸(オメガ6脂肪酸)
大豆油、トウモロコシ油、ベニバナ油などの液体植物油を主とする、すべての原料からのオメガ6脂肪酸を、総エネルギーの11%を摂取するように推奨しています。
トランス脂肪酸
水素添加植物油、反すう動物製品から摂取するすべてのトランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの0.5%以下に、理想は全く摂らないように推奨しています。
健康な食事(Healthy diet)
世界保健機関(WHO)で「健康な食事(Healthy diet)」を紹介しています。
健康的な食生活は、栄養障害や非感染性疾患(肥満、2型糖尿病、心臓病、脳卒中、がん、歯科疾患、骨粗鬆症)を予防するのに役立ちます。
不健康な食事と身体活動の欠如は、健康に対するリスクを高めます。
栄養摂取目標
世界保健機関(WHO)が推奨している、総エネルギーに対する栄養摂取目標の範囲です。
- 総脂肪:15~30%
- 飽和脂肪酸:10%未満
- 多価不飽和脂肪酸:6~10%
- オメガ6脂肪酸:5~8%
- オメガ3脂肪酸:1~2%
- トランス脂肪酸:1%未満
- 一価不飽和脂肪酸:差分
脂肪を減らす
- トランス脂肪酸を極力少なくする
- 飽和脂肪酸をできるだけ多価不飽和脂肪酸に置き換える
ことを推奨しています。
健康的な食事プレート
「健康的な食事プレート(Healthy Eating Plate)」は、毎日、健康的でバランスのとれた食事をするためガイドです。
ハーバード公衆衛生大学院の栄養学専門家と、ハーバードヘルス出版の編集者たちによって考えられました。
1皿(1プレート)に
1/2皿:野菜と果物
1/4皿:全粒穀物
1/4皿:タンパク質
の割合で盛り、更に
少量:健康的な植物性油
水、コーヒー、お茶
を追加します。
少量:健康的な植物性油
オリーブ油、キャノーラ油、大豆油、コーン油、ひまわり油、ピーナッツ油などの植物性油。
マーガリンなどトランス脂肪が含まれている油は避けましょう。
健康的な脂肪摂取源については、一日あたりのカロリー摂取に占めるどれくらいの割合まで摂取するのが良いのかについては定めていません。
健康的な植物性油について
脂肪は3大栄養素の1つで、健康的な食事の重要な部分ですが、最も重要なのは脂肪の種類です。
低脂肪食をするよりも、有益な「良い」脂肪を食べることと、有害な「悪い」脂肪を避けることが、より重要です。
「良い」不飽和脂肪を含む食品を選び、飽和脂肪の多い食品を制限し、「悪い」トランス脂肪を避けます。
低脂肪であれば健康的だというのは間違いであることを念頭に置いて下さい。
良い脂肪:不飽和脂肪
一価不飽和および多価不飽和脂肪
不飽和脂肪を摂ることで、病気の危険性がより低くなります。
高脂肪の食品には、植物油(オリーブ、キャノーラ、ヒマワリ、大豆、トウモロコシなど)、ナッツ、種子、魚などがあります。
悪い脂肪:トランス脂肪
トランス脂肪は、食べる量が少量でも、病気のリスクを高めます。
トランス脂肪を含む食品は、主に部分硬化油からのトランス脂肪で作られた加工食品です。
マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使った菓子パン、ケーキ、ドーナッツ、ビスケットなどの洋菓子、スナック菓子、揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれています。
飽和脂肪
飽和脂肪は、トランス脂肪ほど有害ではないが、不飽和脂肪と比較して健康に悪影響を及ぼすため、適度に消費するようにしましょう。
飽和脂肪を多く含む食品には、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉、ヤギの肉)、バター、チーズ、アイスクリームなどがあります。
ココナッツ油やパーム油のような植物性脂肪の中には、飽和脂肪が豊富なものもあります。
赤肉やバターのような食べ物を減らす場合、魚、豆、ナッツなどの健康的な脂肪を含む食べ物を代わりに食べてください。
日本人は今、オメガ3脂肪酸が不足
オメガ3脂肪酸は、体で作ることができない、食品から摂取する必要がある栄養素です。
ところが、現在の日本人の油の摂取比率を見てみると、オメガ3脂肪酸だけが極端に少なくなっています。
近年、このバランスの悪さが、心筋梗塞などの心疾患のリスクを高めることが分かってきたため、オメガ3脂肪酸を積極的にとることが勧められています。
かつて日本人は魚からオメガ3脂肪酸を十分にとっていました。
しかし近年は、食の欧米化もあって魚を食べる量が減少。
日本人の魚離れが進み、2006年に日本人の1日あたりの肉類の摂取量が、魚介類の摂取量を上回りました。
どの年代でも年々、肉類の摂取量が増加して、魚介類の摂取量が減少しています。
オメガ3脂肪酸の不足が、心筋梗塞などの病気のリスクにつながることが、様々な研究から分かってきています。
オメガ3脂肪酸の推奨用量
フィッシュオイル(魚油)の摂取
日本人の食事摂取基準(2010年版)では、フィッシュオイル(EPA・DHA)について、1日に合計で1000mg以上の摂取が望ましいとされています。
魚を常食しない人にとって、フィッシュオイル(魚油)サプリメントの摂取は、オメガ3を摂る方法の一つです。
オメガ3脂肪酸をサプリメントで摂取する場合は、通常1日500〜4000mgのフィッシュオイル(魚油)を摂取します。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のバランス
必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、体内で対抗するように働きます。
オメガ6脂肪酸は、血液を凝固させたり、体内の炎症を促進したりする働きがあり、オメガ3脂肪酸は、血液を固まりにくくしたり、炎症を抑えたりする働きがあります。
この2つの脂肪酸のバランスが崩れて、一方が過剰になると、血が固まりやすくなって心筋梗塞などのリスクが高まったり、逆に血がサラサラになりすぎて、出血が止まらなくなったりします。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の望ましい摂取比率は、1:1~4であると報告されています。
日本脂質栄養学会が推奨している、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の比率は1:2です。
オメガ3脂肪酸が含まれている植物油
植物油には、オメガ6脂肪酸のリノール酸が豊富に含まれているものの、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸はあまり含まれていないものがほとんどです。
穀物類には、リノール酸が豊富に含まれているものの、α-リノレン酸はほとんど含まれていません。
α-リノレン酸がある程度、含まれている植物油はこれです。
- エゴマ油
- アマニ油(フラックスシードオイル)
- 麻実油 (ヘンプシードオイル)
- 菜種油(キャノーラ油)
- 大豆油
そして、リノール酸よりもα-リノレン酸の含有量が多い、オメガ6脂肪酸よりもオメガ3脂肪酸が多いのは、エゴマ油とアマニ油(フラックスシードオイル)です。
α-リノレン酸は取り扱いに注意
α-リノレン酸は、光と熱に弱く酸化されやすいという特徴があります。
そのため揚げ物や炒め物など、加熱調理には適していません。
サラダやマリネ、カルパッチョなど、油をそのまま生で使う料理や、冷奴や湯豆腐、納豆、ヨーグルトなどにそのままプラスするなどの使い方で、摂ることができます。
α-リノレン酸を含む油で加熱調理をした場合には、オメガ3としての効果は期待できませんので、注意してください。
保管は開封前は冷暗所、開封後は冷蔵庫で保管しましょう。
空気に触れると酸化してしまうので、開封したら1か月をめやすに早めに使い切ることをおすすめします。
男性においては前立腺がんの罹患リスクのため、α-リノレン酸の過剰摂取は注意が必要とされています。
なお、前立腺がんの罹患リスクは、特に乳製品や肉類由来のα-リノレン酸との関連が示唆されています。