微小循環とは、身体の隅々まで血液を循環させる血液の流れです。
全身の細胞へ、生きていくために必要な酸素と栄養素、水分を届け、いらなくなった二酸化炭素や老廃物を運び出します。
つまり細胞にとって不可欠なのです。
身体には太い血管だけでなく、足の先にいたるまで、細かい血管(毛細血管)がびっしり張り巡らされ、その全長はおよそ10万km!
血管内の血液の流れが滞ってしまうと細胞は、酸素と栄養素、水分が足りなくなり、活動できなくなります。
不要な二酸化炭素や老廃物を運び出すこともできません。
血行を良くして全身の血の巡りを良くすること、つまり微小循環が正しく機能することは、体を健康に保つために非常に重要なのです。
しかし毛細血管の劣化によって血液の流れが悪くなり、栄養が運べなくなった部分は細胞が死に、毛細血管が消えてしまいます。
微小循環を良好に保つためにはどうすればいいでしょうか?
血液の役割を知る
血液は、心臓から送り出されて、血管(動脈)を通り、身体の各臓器の細胞に行き渡ります。
生命維持・活動に必要な酸素・栄養素・水分を供給して、代謝産物・老廃物を搬出して、血管(静脈)を通り、再び心臓へ戻ります。
各細胞が活動するためには、細胞への血流が必要です。
細胞への栄養素の運搬の流れ
- 食べる:食べ物を体に入れる
- 消化する:栄養素に分解して吸収する
- 運ぶ:血管を流れる血液で全身へ運ぶ
体に良いものを食べても、栄養素を細胞へ運べなければ、役立てることができません。
毛細血管は細胞への交通網
心臓から出る血液を送る「動脈」と心臓へ戻る血液を送る「静脈」の間をつなぐ「毛細血管」。
太さは5~20μmと非常に細く、多くは赤血球がようやくすり抜けられるほどの7μm前後です。
その中を直径8~10μmの赤血球、25μmの白血球が形を変えながら流れます。
身体中の血管の中で毛細血管は90%以上をしめていて、成人の血管をすべてまっすぐに繋げると10万km(地球を約2.5周分の長さ)を超えます。
血液が身体の隅々まで流れるためには、毛細血管が張り巡らされていることと、血管をスムーズに血液が流れることが重要です。
体温調節は微小循環で
手足の皮膚の毛細血管は、体温調節の働きをしています。
皮膚温が低いとそこからの熱消失を防ぐため、毛細血管へ行く血液を減らします。
特に体内部の熱が十分にない時は、手足への血流を少なくして、体内部の熱を保ちます。
手足が冷えている場合には、
- 外部から皮膚温を高くして皮膚の毛細血管の血流を良くする
- 筋肉を動かす
が有効です。
末端冷え性には
末端冷え性が酷い人は、有酸素運動をして赤筋を増やしましょう。大きな筋肉の太ももに、赤筋をつけると効果的です。
大股ウォーキングや、サイクリングが赤筋を足につけるのに向いています。
病気になりやすい
病気の人の多くは、血液内の赤血球や白血球、血小板といった血球成分の流れが悪くなっています。
血球成分の大きさに対して、細い毛細血管は、滞ることが多いのです。
赤血球の流れが悪いと、人間にとって一番必要な酸素が運ばれません。
いくら鼻や口から酸素を吸っても、末梢の細胞や組織には届かないのです。
微小循環がおこなわれないと、細胞や組織が活動できずに、体は弱って病気にかかりやすくなります。
毛細血管本数が減少する
微小循環がおこなわれない血管、つまり血液が流れなくなった毛細血管は、ゴースト血管と呼ばれます。
毛細血管には隙間があり、その隙間から血液成分が微量に漏れ出すことで、周辺の細胞に酸素や栄養を届けています。
血流が絶たれて、酸素や栄養を得られない細胞が死ぬと、毛細血管の本数が少なくなった状態となります。
ゴースト血管は、認知症や骨粗しょう症などの深刻な病につながります。
ゴースト血管化する原因
ゴースト血管化する(血液が流れなくなる)主な原因は
があげられます。
原因を改善できれば、ゴースト血管は再生することができます。
飲食習慣
消化して細かく分解できないと、栄養素の吸収や細い毛細血管を通って運ぶことができません。
早食いせず、しっかりと噛んで食べましょう。
食べ過ぎ、飲み過ぎは消化不良となります。
栄養が偏らないように、バランスよく食べましょう。
(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル
血と血管の質を整えるには、わかめやヒジキなどの海藻類、イワシやサバなどの青魚、黒豆などの豆や大豆製品を取るといいでしょう。
生姜、ニラ、ネギは、からだを温めて血行を促進します。
ゴースト血管の予防に効果がある物質として、漢方薬のケイヒや、シナモン・ヒハツ・ルイボスティーに含まれる成分が確認されています。
睡眠習慣
一日の間に大量の血液を流している血管は、傷んできますので、修復が必要です。
睡眠中には、細胞の修復を促す成長ホルモンが分泌され、血管だけでなく全身の状態を回復させることができます。
熟睡できる環境で、必要な睡眠を確保しましょう。
睡眠時間が短かったり、熟睡できていなかったりして、成長ホルモンが分泌が十分でないと、修復は不完全なままとなってしまいます。
日中に立ち続けていたり、座りっぱなしですと、血液が足で滞ってしまいますので、横になることで、全身にバランスよく戻します。
運動習慣
有酸素運動する
血の巡りを改善するために、ウォーキングや軽いランニングなどの有酸素運動を習慣にして、適度にからだを動かしましょう。
ハードなスポーツは、血管が広がりっぱなしになって過度な負担がかかり、エネルギーも消耗します。
活性酸素も増えますので、やりすぎには注意してください。
スキップする
効果的な対策として専門家がおすすめしているのが、「スキップ」です。
ふくらはぎの筋肉を活発に動かすスキップは、全身の血流を上げるのに簡単で、最適な方法です。
血流が上がれば、毛細血管が漏れにくくなりゴースト血管を防げると期待されます。
専門家のおすすめは、朝昼晩、それぞれ20回ずつ行う方法です。
ストレッチをする
筋肉が動くとそこにある静脈が押し潰され、血管内の血液が心臓に向かって進んで行きます。
筋肉が硬いと血管が圧迫され血液の流れが悪くなります。筋肉を伸ばすストレッチで筋肉を柔らかくしましょう。
次のような運動も効果的です。
- 手を心臓より上に挙げた状態で手をぶらぶら振る
- 仰向けに寝て、かかとを上げ下げする
- かかとを膝に乗せて、足首を曲げ伸ばしする
深呼吸をする
ゆっくり大きな呼吸をすることが血液の循環を良くします。
姿勢が前かがみでは大きな呼吸はできませんから、背筋を伸ばして胸を開き、ゆっくりと鼻からお腹まで膨らむように息を吸いましょう。
リラックスする
毛細血管入口と出口には、括約筋という特殊な平滑筋があり、交感神経等の影響を受けると、収縮、拡張が起こります。
入口括約筋の異常収縮によって入口が極細になることで、血液が入れなくなります。
精神的なストレスが継続していると、毛細血管に血液が流れなくなり、ゴースト化してしまうので、リラックスして副交感神経を優位にしましょう。
血液ドロドロ:瘀血
中医学では、血液がドロドロと粘りが高くなり、流れにくくなっている状態を「瘀血(おけつ)」といいます。
血液が流れが悪くなると、血管が劣化(硬化)していきます。
弾力がなく内側に汚れのたまった血管では、血液を身体のすみずみにまで巡らせることができません。
各組織に十分な酸素が運ばれないので、
を感じやすくなり、肩こりや冷えなどを引き起こす原因になります。
冷え、特に血流が届きにくい手先や足先が冷たくなる人が少なくありません。
くすみや目の下のクマなど肌トラブルにも直結します。
頭痛、胸痛、腹痛、関節痛など体に痛みが出てきます。
さらに悪化すると、子宮筋腫、皮膚の硬化、精神障害、糖尿病、痛風、気管支喘息、慢性肝炎、関節リウマチ、高血圧、心筋梗塞、脳血栓などの症状が見受けられます。
症状の改善のためには、ドロドロした血液をサラサラにして血の流れを回復させていくことが大切といわれています。
回復させるのために、改善する必要がある箇所こそが微小循環です。
血管力をアップする
適切なケアで血管力を高めれば、ゴースト血管は再生します。
入浴する
入浴は、血管を開いて血行を改善させます。
ただし湯温が熱すぎたり長時間つかったりすると逆に血管を傷めてしまうので、40度で10分までを目安に。
ゆっくり入浴したいときは、ぬるめのお湯で半身浴をしましょう。
漢方薬を使う
血液を活性化させて巡りをよくする生薬を使う方法もあります。