子育ては富よりもさらに寿命を延ばす
オーストリアとポルトガルの研究者らが、イギリスの約20万の国勢調査データを分析して、子どもの誕生といった個人的な環境が寿命に及ぼす影響を調べました。
子どもを持つ、親となった人たちは、
- 感染症、がん、心臓病による死亡するリスク
- 不幸な事態に巻き込まれたり、殺人、自殺によって死亡するリスク
が低いことが明らかにされました。
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オーストリアとポルトガルの研究者らが、イギリスの約20万の国勢調査データを分析して、子どもの誕生といった個人的な環境が寿命に及ぼす影響を調べました。
子どもを持つ、親となった人たちは、
が低いことが明らかにされました。
研究をおこなったのは、オーストリアのクラーゲンフルト大学(University of Klagenfurt)の経済学者パウル・シュヴァイツァーと、ポルトガルのミンホ大学(Universidade do Minho)のミゲル・ポルテラ氏。
イギリスのウェールズ地域の住人、20万5277人の1971年~2011年までの国勢調査データを分析しました。
この住人のうち、39%が2011年までに死亡しています。
研究者は、社会的地位、年齢、家族状況(配偶者の有無、子どもの有無)、死亡の時期と原因の間にある統計的な関連を調べました。
50歳~90歳の女性の場合、
子どものいる女性は、いない女性と比較して、
という数値となりました。
女性の傾向は男性にも同様に現れました。
子どもがいる男性は、いない男性と比べて
という数値となりました。
子どもがいる人が、感染による死亡率が低いことについては、子どもが様々な病原菌を持ち込むことによって、親の免疫システムが強化されると説明できます。
この他のケースで、子どものいる人の死亡率が低い原因については、まだ研究の余地があります。
子どもがいる場合、親は健康的な生活スタイルになる傾向があり、子どもがいない場合、不健康な生活スタイルに陥りやすいからではないか、と考察されています。
研究者は、小さな子供たちが感染症にかかり、その病原菌が親に持ち込まれ、予防接種のように親の免疫システムを強化すると考えました。
調査結果から、子どもがいない人と比較して、子どもを持つ人の感染症による死亡率は、女性で47.2%減少、男性で34.6%減少となり、仮説を裏付けるものとなりました。
しかしながら、子どもを持つ人の死亡率は、がん、心臓病、不幸な事故、殺人、自殺において、より減少しました。
研究では、高収入、財産の有無といった他の要因が寿命にどう影響するのかも調査対象とされました。
研究をおこなった2人は述べています。
「裕福な人たちはもちろん長生きする。
ただ、どんな場合も子どもがいることは、高収入や不動産の所有よりも、はるかにポジティブな影響を及ぼすという事実がわかり、驚きを禁じ得ない」
研究では、結婚(配偶者の有無)が寿命にどう影響するのかも調査しました。
結果、配偶者がいない人と比較して、配偶者がいる人の不幸な事故、殺人、自殺による死亡率は、女性で43.5%減少、男性で56.3%減少となりました。
しかし、未婚の男性と比較して、既婚の男性は癌による死亡率が70.7%増加していました。
一方、未婚の女性と比較して、既婚の女性は癌による死亡率が17.6%増加していました。
The parental co-immunization hypothesis: An observational competing risks analysis
Miguel Portela & Paul Schweinzer