2015年の「ランセット」誌に 掲載された論文によると
- 先進国ではどこでも女性は男性より
平均6年から8年長生き - 豊かな国の男性は、女性に比べてどの年齢でも
死亡率が2倍高い
という、興味深い事実があります。
なぜ男性よりも女性の方が長生きなのか?
この要因こそ長寿の秘訣かもしれません。
心理学者で、ハーバード大学の心理学教授スーザン・ピンカーの研究をみてみましょう。
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2015年の「ランセット」誌に 掲載された論文によると
という、興味深い事実があります。
なぜ男性よりも女性の方が長生きなのか?
この要因こそ長寿の秘訣かもしれません。
心理学者で、ハーバード大学の心理学教授スーザン・ピンカーの研究をみてみましょう。
世界で1カ所だけ、男性の寿命が女性と同じ場所があります。
それは山深い辺ぴな場所で、男性でも女性でも特に長生きする人が多い地域(ブルーゾーン)の1つ、イタリアのサルディーニャ島。地中海に浮かぶ島です。
イタリア本土とは300キロも離れていませんが、100歳を超える人の割合は6倍です。北アメリカと比べると10倍という高率です。
男女で寿命に差がないのはここだけです。
ブルーゾーンの真ん中にある村で調査に行って気づいたこの村の良さは、街並みの美しさではなく、家が密集していることです。
家と家の間隔が狭く通りや路地が入り組んでいます。つまり住民は常に誰かと顔を合わせる生活をしています。
いつも周囲には、拡大家族と友人たち、近所の人や聖職者、バーや食料品店の店主がいます。
いつも誰かがそばにいたり、立ち寄ったりしています。ぽつんと取り残されて、寂しく暮らす人はいません。
住人は寿命を迎えるまで、ずっと人々に取り囲まれて過ごすのだと、現地に行ってすぐ分かりました。
ブリガムヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルト=ランスタッドは一連の研究で、まさにこの問いを追究しました。
研究対象は中年の人たち数万人です。
など、ライフスタイルのあらゆる面に目を向けました。
こういったすべてを記録し、7年後に、どの人がまだ生存しているかを調べました。
長寿の可能性が最も高くなる2つの要因は、どちらも社会生活に関わるものです。
急にお金が必要になったとき借りに行ける相手や、体調が悪くなったとき医者を呼んでくれたり、病院に連れて行ってくれたりする人です。
あるいは絶望して生きる意欲を失いかけたとき、寄り添ってくれる人です。
そういう人が何人かいてくれたら、長生きする可能性がぐんと高まるわけです。
社会的統合と呼ばれる「日々の活動でどれだけ交流があるか」が1位でした。
何人の人と話すか?
これは結びつきが強い人と弱い人の両方についての話で、自分にとって大きな意味を持つ、とりわけ身近な人に限りません。
たとえば
こうした交流の有無が、どれだけ長く生きられるかを予測する、最も強い手がかりの1つです。
じかに顔を合わせていると、神経伝達物質がどっと放出され、ワクチンと同じように、現在のあなたも、将来のあなたも守ってくれます。
単に誰かと目を合わせたり、握手したり、ハイタッチしたりするだけでも、オキシトシンを分泌するのに十分です。
それによって信頼のレベルが高まり、コルチゾール濃度は下がるので、ストレスが軽減されます。
ドーパミンが作られて、気分がいくらか高揚し、痛みが和らぎます。自然のモルヒネのようなものです。
大きな理由は、女性の方が生涯にわたって顔と顔を合わせる関係を大事にして維持するということです。
こうした直接的な友人関係によって、病気や衰弱に対抗する生物的なバリアができます。
これは人間だけではなく、霊長目の他の動物にも当てはまることです。
人類学者ジョーン・シルクによるメスのヒヒの研究では、中核となるメスの友だちがいる場合、コルチゾール濃度によるストレスのレベルが低く、長く生きて子孫を多く持つことが分かりました。
このような直接的な交流の力は、社会的関係を維持している人たちの間で、認知症の発症率が低いことに表れています。
乳ガンに罹った女性でも、孤独な人に比べて、生存率が4倍も高いのはそのためです。
脳梗塞になった男性も、仲間としょっちゅう会って、ポーカーをしたり、コーヒーを飲んだり、シニアのホッケーをしたりしていれば、社会的接触が薬以上に体によい影響を与えます。
定期的に人と会うというのは、脳梗塞患者にとって、無理なく実行できる効果的な方法です。
ブリガム・ヤング大学の心理学教授ジュリアン・ホルトランスタッドは、2つの膨大なメタ分析(統計的手法を用いて、複数の論文のデータを定量的に結合、分析する)の結果、「孤独」が「肥満」よりも公衆衛生上、深刻な脅威である可能性を示しました。
2つのメタ分析のうち1つは、148の研究、30万人以上の被験者データが対象。
この分析により、社会的な交流のある人は、早期死亡リスクが50%低下することが分かりました。
もう1つの分析では、70の研究、北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアに及ぶ340万人のデータを対象とし、「社会的孤立」、「孤独」、「ひとり暮らし」と死亡率の関係を調べました。
これらの3つの要素全てが、肥満と同等もしくはそれ以上に、死亡リスクを高める傾向にありました。
研究者らは、「孤独」が極めて致命的だと考えています。
など、多くの問題を引き起こす可能性があります。
これらはいずれも、病気にかかったり、命に関わる怪我をするリスクを高めます。
米国の白人および黒人1万3000人以上を約19年間追跡しました。
結果、社会的な交流が小さい人は、大きい人に比べて、脳卒中の発症率が約40%高かったのです。
解析の対象者:
ARIC(Atherosclerosis Risk in Communities Study)第2回健診(1990~1992年)を受診した脳卒中のない白人・黒人13686人
平均年齢は57歳
女性は56%
黒人は24%
追跡期間は18.6年(中央値)
社会的な交流については、10項目からなるLubbenの社会的な交流尺度を用い、各対象者における家族や友人、隣人との能動的な社会的な交流の広さを評価。
各項目(0~5点)の合計点数(最低0点,最高50点)に基づき、過去の報告にならって以下の4つのカテゴリーに対象者を分類しました。
20点以下: 小さい(380人)
21~25点: やや小さい(778人)
26~30点: やや大きい(1908人)
31点以上: 大きい(10620人)
追跡期間中の脳卒中発症は905件。
1000人・年あたりの発症率は4.0。
うち804件が虚血性脳卒中、114件が出血性脳卒中。
自身の社会的な交流が小さいと答えた人では、大きいと答えた人に比べて、脳卒中発症リスクが約40%高いことが示されました。
また次のような別の調査結果もあります。